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 人と人との距離を遠ざけた新型コロナウイルス。だが、心を通わせる時間を得た球児もいた。

 休校中、高岡第一(富山)の投手、佐伯成優(なりまさ、3年)は両親に投球を受けてもらっていた。最速146キロのプロも注目の右腕。どうしても遠慮がちの投球になった。だが、自宅が離れたチームメートとは集まれない。

 「あいつになら全力で投げられる」。砺波(富山)の主将、嶋倉連太郎(同)の顔が浮かんだ。庄西中の軟式野球部で3年間バッテリーを組んでいた。

 5月上旬、LINEを送ると、嶋倉は快諾。5キロほどの距離を自転車でやってきた。

 「今の佐伯の球を受けてみたい」と思っていた嶋倉だが、速球を受けて最初に出たのは「こわっ!」という叫び、そして笑いだった。中学時代とは比べものにならない球速に驚いた。

 佐伯もつられて笑った。ほぼ垂直に振り下ろすフォームは中学時代から。だが、嶋倉は「変わってないけど、迫力が出たな」と言ってくれた。少しは成長しているのかな、と思えた。

 高岡第一には、同じく140キロ超の速球を持ち、かつ制球力のある田中誠央(まお、同)がいる。昨秋から先発が多いのは立ち上がりの良い田中だ。切磋琢磨する良き仲間だが、佐伯は「自分の武器は何なのか」と悩んでいた。週3~4回、嶋倉と続けた練習で、自分を改めて見つめ直すことができた。

 お互い「決勝でやろう」と誓ったが、砺波は3回戦で昨秋覇者の高岡向陵に敗れた。佐伯がその日、「お疲れさま」と嶋倉に送ると、「勝ってくれ。優勝してくれ」と返ってきた。

 昨夏まで3連覇の高岡商と当たった準決勝。高岡第一は田中が7回を投げ抜き、コールド勝ちで決勝に駒を進めた。試合後、佐伯は「チームのためとはいえ、悔しい。決勝では絶対に投げたい」。支えてくれた仲間や家族らに、最高の投球を見せたいと思っている。=敬称略(田添聖史)