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 中日ドラゴンズを長年、実況してきた名物アナウンサー2人がプライドをかけて“対決”した。プロ野球のファン同士で、球場で観戦した「すごい試合」を繰り出し、どれほどディープなファンなのかを競う「観戦じゃんけん」。夜のクラブで働く女性が、お客さんからもらった名刺の肩書の偉さや企業の知名度を競う「名刺じゃんけん」からヒントを得て、筋金入りの中日ドラゴンズファンで朝日新聞の中島鉄郎記者が、コラムで提唱したものだ。

 TBS系のCBCテレビで毎週日曜日に放送される「サンデードラゴンズ」の司会を務める若狭敬一さん(44)と、東海ラジオ放送の大澤広樹さん(44)。若狭さんは、テレビとラジオ合わせて年に平均15試合、通算250試合、大澤さんは平均25試合、通算500試合を実況してきた。2人がマイク越しに伝えてきた中日の戦いぶりを“実況じゃんけん”として競うと――。

拡大する写真・図版草野球で毎年対決する若狭敬一さん(右)と大澤広樹さん(1月13日、大澤さん提供)

毎週火曜日に、中日ドラゴンズにまつわる話題をお届けします。

復活劇と、記録と記憶に残るあの試合

 まずは【1回戦】。先攻の若狭さんは、「シンプルに価値ある試合に立ち会えた」と2018年4月30日のDeNA戦(ナゴヤドーム)を挙げた。ソフトバンクから中日に移籍した37歳の松坂が6回1失点で、日本球界で12年ぶりに勝利をつかんだ試合だ。

 五回2死満塁で、宮崎に押し出しの四球を与えた後、梶谷を一ゴロに仕留めた。「宮崎に勝負にいって打たれるぐらいだったら、押し出しで1点を与え、梶谷を抑えようと。修羅場をくぐり抜けてきた経験値でもぎとった勝利だった。すごくしびれた」

拡大する写真・図版ヒーローインタビューで笑顔を見せる中日の松坂投手=2018年4月30日午後5時8分、ナゴヤドーム、上田潤撮影

格好いいフレーズ選びに重圧

 試合中盤、ディレクターに「これは未来永劫(えいごう)残って、繰り返し使われる」とプレッシャーをかけられていたという。九回、救援の田島が最後の打者を打ち取り、松坂の勝利が決まる瞬間だった。「格好いいフレーズを言おうとした。『最後はショートフライ。松坂の勝利が落ちてくる』と。しかし、これはとちるな、と思って、『松坂、12年ぶり勝利』と、置きにいってしまった。感情のゆさぶられるままに言えたらよかったけれど、プレッシャーがあった」。アナウンサーとして、節目の言葉をどう選ぶか。出過ぎてもいけないと自重する一方で、心に刻まれるフレーズを残したい。その葛藤が今も胸に残る。

 後攻の大澤さんは余裕の笑みを浮かべた。「優勝を実況しているから格が違う。これは、対決になるのかな。圧倒的なゲーム差がある」と言って、いきなり切り札を出した。2007年11月1日、日本ハムとの日本シリーズ第5戦(ナゴヤドーム)。山井―岩瀬のパーフェクトリレーで53年ぶりに日本一になった試合だ。

拡大する写真・図版優勝し胴上げされる中日・落合博満監督=2007年11月1日午後8時38分、ナゴヤドーム、上田幸一撮影

 1959年に設立された東海ラジオ放送。中日は54年に初めて日本一に輝いた後、日本シリーズには06年までに6回進んだものの、栄光にたどり着いていなかった。大澤さんは「日本一を誰もしゃべっていない。自分が最初になる。ずっと残っていくと思うと、『絶対にとちってはいけない』『かんではいけない』というプレッシャーが大きかった。客観視して、きちんとしゃべろうと意識した。とちれないと思うと、無難な方になってしまう。僕も置きに行った」。歴史に残る実況のプレッシャーは、若狭さんと同じだった。

 八回の中日の攻撃。2死になっても、ベンチ前で山井がキャッチボールをしていない。「解説者と一緒に、『あっ』となった」。九回、岩瀬がマウンドへ。「ああだ、こうだと議論する余地もなく、そんなことよりも日本一と」。落合監督が胴上げされる。「この人がドラゴンズの歴史を動かしたということで、『ドラゴンズの歴史の扉が開いた』と、かまずに言えた」

 当時、32歳でアナウンサーでは2番目に若かった。日本一が決まる試合は、経験豊富なベテランアナウンサーが担当する習わしがあるという。「会社は4勝1敗で決まると思っていなかった。6、7戦目だろうと。だから、僕がしゃべった。運の良さもあった。会社に戻ると『これで東海ラジオの歴史も変わった』と言われた」。アナウンサーの世代交代を示す実況だった。

    ◇

 1回戦は、球界を代表する投手の復活劇と、記録にも記憶にも残る試合の応酬。【2回戦】はさて――。

 若狭さんは続いて、シミュレー…

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