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 これから20年以内に、紙の新聞の印刷をやめるだろう――。米新聞大手ニューヨーク・タイムズ(NYT)のマーク・トンプソン最高経営責任者(CEO)は10日、そんな予測を米テレビに披露した。新型コロナウイルス危機で落ち込んだ広告収入を元に戻すのは難しい、とも指摘。すでにデジタル中心に事業モデルを転換したNYTは優位に立てている、と自賛した。

 「タイムズはあと10年は確実に、そしてたぶん15年以上、印刷されるかもしれない。ただ、20年後も印刷されているとしたら、私には大変な驚きだ」

 トンプソン氏は、米CNBCテレビのインタビューにそう答え、2040年にはNYTが完全にデジタルに移行しているとの見通しを示した。

 紙のNYTの契約者数は6月時点で84万部で、前年同月より4%減った。コロナ禍で高級ブランドなどが広告を控え、4~6月の広告収入は半減した。

 トンプソン氏は「広告はすでに何年も落ち込みが続いた。衰退は動かしがたい」と指摘。今の部数ならば、仮に広告収入がゼロでも紙の新聞発行で利益を上げられるものの、長期的には維持が難しいとの見方を示した。

 トンプソン氏は英BBC放送会長から12年にNYTに転じ、デジタル化の陣頭指揮をとってきた。デジタル版の契約数はこの8年間で64万から570万に増加。今年4~6月期には史上初めてデジタル版の売り上げが紙媒体を上回った。

 NYTはトランプ米政権やコロナ危機をめぐる手厚い報道をテコに、デジタル版の購読者を増やしてきた。トンプソン氏は、前回の米大統領選があった16年にはすでに「紙からデジタルへ」「広告から購読料へ」と軸足を移していたため、「巡ってくる機会を生かせる準備ができていた」と語った。今後も大ニュースは尽きず、新たな購読者の獲得につながる、と自信を示した。

 トンプソン氏は9月にCEOを退く。後任にはメレディス・コピット・レビアン最高執行責任者(COO、49)が昇格する。レビアン氏は米経済誌「フォーブス」出身で、NYTで史上最年少、女性として2人目の経営トップとなる。(ニューヨーク=江渕崇)