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(10日、甲子園交流試合 明徳義塾6-5鳥取城北)

 勝つか負けるか。試合の行く末は4番の肩に掛かっていた。明徳義塾が1点を追う九回2死一、二塁、長打なら逆転も見えるが、打ち取られればゲームセットだ。だが新沢颯真(そうま)には確信があった。「必ず抜ける」

 七回まで無安打と苦しい展開だった。鳥取城北の左腕・阪上陸を想定し、2週間ほど前から練習で左からのカーブと直球を打ち込んできた。だが先発は右腕の松村亮汰で、140キロ台の速球で押しまくられた。足技を生かして揺さぶり、2点をもぎ取ったが、八回に打者一巡の猛攻を浴び、あっという間にリードを許した。

 「このままでは終われないな」。新沢は八回、継投した阪上の外角直球を無我夢中で振り切り、チーム初安打となった。新沢に続けと、7番・米崎薫暉の適時打などで2点を返し、1点差まで迫った。

 チームを勢いづかせた新沢に、再び幸運が巡ってきた。九回、打席に入る直前に右腕の中川央が降板し、阪上が再登板したのだ。馬淵史郎監督は「お前ラッキーや、打てるぞ」と声をかけた。

 八回の安打で自信がついた新沢は2球目を見逃さなかった。得意としている内角直球だった。腕をたたんで迷わず振り抜く。角度よく上がった飛球は、右翼手の頭上を大きく越えていく。新沢の目に二塁走者に続いて一塁走者がホームベースに頭から滑り込むのが見えた。「素直に気持ちよかった」。仲間に初めて見せる涙があふれた。

 馬淵監督は苦しかった試合を振り返る。「やることやって辛抱して辛抱して、最後にああいうことになる。やっぱり甲子園はいいですね」。=敬称略(湯川うらら)