太平洋戦争末期の、ある日。宇都宮市内で、国民学校から友達と下校していた生井弘明さん(86)は、若い女性の2人連れを見つけた。
1人は、明るい色調の和服。特に目を引いたのが、ウェーブがかかった髪だ。きれいになでつけられて、光って見えた。
「パーマだ」。当時、男性は国民服、女性はもんぺ姿の人が多かった。少年たちは「ぜいたくだ、こらしめよう」と思い立った。
未知の感染症におびやかされ、窮屈な暮らしが続く今年の夏。75年前、今よりはるかに苛烈(かれつ)な夏があった。「あの夏」を知る人たちは、この夏をどんな思いで見つめるのか。記者がたずねた。
「いーまは節約時代。パーマ…