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 (11日、甲子園高校野球交流試合、明豊4―2県岐阜商)

 3点を追う九回、県岐阜商の主将、佐々木泰(3年)はベンチの鍛治舎巧監督の上空を指さすジェスチャーを見て、ピンときた。「ホームランを狙っていいんだ」。追い込まれたが、5球目。高めの直球を体がよじれるくらい振り抜いた。高々とあがった白球は浜風にも乗り、左中間席へ。交流試合第1号の本塁打となった。

 この1試合にかけていた。岐阜の独自大会は学校関係者に新型コロナウイルス感染者が出たため、辞退。約2週間の自粛期間が設けられ、自宅から出ることができなかった。「家で大会を見ていてうずうずしていた」。練習を再開したのは7月30日。急ピッチで実戦形式の練習に取り組んできた。

 悔しさを晴らすために挑んだ甲子園。自身は六回の第3打席まで1安打を放ったものの、試合は劣勢のまま進んだ。そして、高校最後の打席。恩師に背中を押され、フルスイングを貫いた先に、高校通算41本目の本塁打が生まれた。

 試合には敗れたが、佐々木の表情は晴れ晴れとしていた。「自分たちには、この1試合しかなかった。そこで打ててよかった」。記録にも記憶にも残るアーチとなった。(小俣勇貴