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村山斉の時空自在<34>

 ビッグバンで始まった宇宙はすべてのものが飛び散って膨張してきた。とはいえ重力で引っ張り合うのでブレーキがかかり、膨張は徐々に遅くなる。膨張はいずれ止まって収縮しぐしゃっと潰れて宇宙は終わるのか。もしくは重力を振り切って膨張し続けるのか。

 その運命を見極めたいと観測を始めたのが私の大学の同僚、ソール・パールマターだ。遠くの宇宙には昔の姿が見える。近くと遠くで膨張の速さを測れば、膨張がどのように減速してきたか分かり、運命が予測できる。

 結果は世界を驚かせた。最初は予想通り減速していた宇宙は最近、加速を始めたのだ。約70億年前のことだ。

 重力に逆らって、何者かが宇宙の膨張を後押ししている。宇宙が大きくなっても薄まらない力があるようだ。ダークエネルギーと名づけられた。

 この発見は2011年にノーベル賞を受けたが、ダークエネルギーの正体は不明のまま。加速が進んで宇宙は将来、引き裂かれて終わってしまうかもしれない。ビッグリップと呼ばれる。

 国の未来を国勢調査で予測するように、宇宙でも国勢調査のような大規模観測をすれば運命を予想でき、ダークエネルギーの正体も見えてくる。

 観測には日本のすばる望遠鏡が最適だ。巨大な8・2メートルの鏡で遠く、昔の宇宙が見える。ハッブル宇宙望遠鏡より視野が約千倍大きいから、千年かかる観測を数年でできる。一度に約2400個の銀河の距離を測る装置を製作中だ。超広視野多天体分光器という。NASAのエンジニアも協力してくれているが、約90億円かかる。

 世界から賛同する研究者が現れ、50億円を集めた。日本政府から23億円、民間の財団からも4億円など。でも23年に観測を始めるには、まだ5億円が足りない。志ある読者に支援(https://pfs.ipmu.jp/ja/donation.html別ウインドウで開きます)をお願いいたします。

◆村山斉

 むらやま・ひとし 1964年生まれ。専門は素粒子物理学。カリフォルニア大バークリー校教授。初代の東京大カブリ数物連携宇宙研究機構長を務めた。