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(12日、甲子園交流試合 加藤学園3-1鹿児島城西)

加藤学園・野極友太朗選手

 四回、生還を狙う相手走者を中堅手が本塁で刺し、窮地を切り抜けると思わずベンチから飛び出し、仲間とハイタッチを重ねた。

 昨夏、新チームになってすぐの走塁練習。打席から眺めていたら米山学監督に一喝された。「アウトになって負けたら、あいつのせいにするのか」。走者が全力を出していないとは感じていたが、注意するのにためらいがあった。

 それまでは引退した先輩が厳しい言葉をかけてくれていた。自分のプレーに集中してレギュラーを狙いたい気持ちもあった。だけど、チームのためには誰かが「鬼」にならなければいけない。「怠慢プレーに誰が納得するんだ」と覚悟を決め、角を生やした。

 秋の大会前、米山監督から副将に指名された。「鬼の副将」の誕生である。練習で仲間の気の緩みを感じると、大声をグラウンドに響かせた。嫌われ役に徹したが反発する者はいなかった。自分にも人一倍厳しい姿が仲間の目に映っていたからだ。それどころか「だらだらするな」「いいのか!それで」と仲間も角を生やし始めた。

 監督は「『言い過ぎだろ』と思うほど、誰よりもチームのことを考えてくれている」と認めてくれた。声かけで成長する選手やチームの姿に、自分も新たな目標を得た。「誰かのために頑張る喜びを知った」。将来は人命のために働く消防士になりたい。

 昨秋の大会は出場なし。この日も出番はなかったが、八回には三塁コーチとして相手守備のもたつきを見逃さず腕を回し、杉山のランニング本塁打を後押しした。「悔いは全くない。やってきた力を出せてよかった」。鬼の目から涙が流れた。(佐藤祐生)