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(12日、甲子園交流試合 加藤学園3-1鹿児島城西)

 鹿児島城西は八回裏、ランニング本塁打で2点を奪われた後、マウンドを前野将輝君(3年)に譲った。中堅手と交代し、外野へと回った時、エースで4番の八方悠介君(3年)の耳に、白血病で亡くなった親友の声が響いた。

 あきらめるな、全力を尽くせ

 そうだ。勝負はこれからじゃないか。気持ちが切れかけた自分を奮い立たせた。

 前野君が後続を断って迎えた九回表の攻撃。先頭打者として打席に立つ。「必ず逆転してやる」。ツーボールノーストライクの後、振り抜いた打球は左前へ。1死後、代打の砂川侑弥君(3年)が二塁打を放ち、本塁へと駆け込んだ。

 親友の名はナオヤ。小学5年生で発病し、中学進学後に亡くなった。元気な頃はいつも一緒。八方君は「プロ野球の選手になりたいんだ」と将来の夢を打ち明けたこともあった。

 コロナ禍で春の選抜大会が中止となり、再挑戦を期した夏の大会も見送られた時、心が折れそうになる自分がいた。そんなとき、ナオヤを思い出した。「おれは元気に好きなことをしている。一日一日、1秒1秒を全力で生きなければナオヤに申し訳ない」。自然と力がわいてきた。

 そして迎えたこの日。ともに初出場の加藤学園戦を前に、みんなでこう話し合った。「思い出づくりに来たわけじゃない。決勝戦だと思って頑張ろう」

 幼い頃から夢に見たマウンド。ピンチを招く甘い球も投じたが、スプリットやスライダーがさえ、8三振を奪った。

 目標だった「初出場初勝利」はかなわず、後悔がないといえばウソになる。それでも、投球も打撃も走塁も、全力でやりきったことだけは間違いない。天国のナオヤに伝えたい。

 「勇気をくれてありがとう」と。(三沢敦)