[PR]

 13日から16日は、例年なら徹夜の盆踊りでにぎわう郡上市八幡町。コロナ禍の今年は、7月から9月の延べ31夜にわたる「郡上おどり」がすべて中止になった。街に鳴り響く下駄(げた)の音は、聞こえない。

 「せせらぎ、浴衣、下駄の音」――。郡上八幡の踊りの時期を形容する昔ながらの慣用句だ。古い木造家屋が連なる城下町にはせせらぎが縦横に流れる。街歩きには、和装が似合う。

 郡上おどりは浴衣と下駄が「正装」。4夜にわたる徹夜おどりでは、連夜4万人以上の下駄が一斉に固い路面をたたいてきた。

 中心部にある郡上木履(もくり)は、郡上産ヒノキで作った下駄を売る。

 10~3月に作り、4~9月に店を開くが、今年の売れ行きは昨年の7割減。徹夜おどりの4日間で約1千足を売ってきただけに、影響は大きい。

 店主の諸橋有斗さん(32)は愛知県出身。美濃市の県立森林文化アカデミーで学び、「木に寄り添って生きたい」と築100年近い町屋を借りて6年前に起業した。「2人の子どもに郡上おどりを見せられないのも残念。来年はいつもの夏が戻ってほしい」

 諸橋さんの店からほど近い石山呉服店は、浴衣をレンタルする。短パン、Tシャツ姿などで踊る人が増え、「風情を取り戻したい」と20年ほど前から始めた。

 店主の石山加代子さん(63)は「販売用も含め、反物を例年通りに仕入れたが、さばけない。レンタルも今年はゼロに近い」。

 浴衣を通して多くの友人ができた。「全国の郡上八幡ファンと商いで仲良くなった。でも今年は電話でやり取りするだけ」と言う。

 郡上おどり保存会員でもあり、全夜、屋台の上で三味線を奏で、一緒に踊るのが夏の過ごし方だった。「コロナ禍が続くと、浴衣や踊りの日本文化も失われてしまうかもしれません」

 国重要無形民俗文化財の郡上おどりは「かわさき」「春駒」など全10曲。延べ30余夜で毎年約30万人が集い、徹夜おどりにはこのうち約18万人が参加している。(ライター・森川洋)

関連ニュース