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 星までも戦争に利用された時代があった。飛行機の位置を測る「天文航法」に焦点を当て、戦争を描いたプラネタリウム番組「戦場に輝くベガ―約束の星を見上げて」が15日まで、動画投稿サイトで無料公開されている。山梨県立科学館が2006年に作り、コロナ禍の状況で初めてのオンライン上映となる。

 出張プラネタリウムなどの活動をしている団体「星つむぎの村」(北杜市)が企画した。共同代表で、制作当時に科学館職員だった高橋真理子さんと跡部浩一さんが脚本を手がけ、全国延べ28カ所で投影されてきた。

 大学生の和夫と女学生の久子は天の川を見上げ、「さみしい時や苦しい時にはあのベガを見上げよう」と約束する。和夫は陸上爆撃機「銀河」に搭乗する偵察員になり、久子は勤労動員生として海軍に勤める。和夫は天文航法でベガの高度を調べ、爆撃に向かう。天測に使う「高度方位暦」を作っていた久子は東京空襲に遭う――。

 高橋さんが「銀河」の元搭乗員や高度方位暦を作っていた東京の元女学生、県内の戦争体験者など20人以上に取材し、作った。「戦争に勝ちも負けもない。どちらも失うばかり」。和夫のこのセリフは実際の証言の一つだ。

 「久子」は、戦争体験について聞いた甲斐市の山田久子さんからとった。「戦時中、憧れの人はいましたか」と聞くと、「そりゃあいたさよ」と言って涙を浮かべた。

 山田さんは3年前、93歳で亡くなった。県老人クラブ連合会が11年に発行した「最後の戦争体験記」には山田さんの手記がある。

 同級生9人が志願兵となり亡くなったこと、負傷し帰還した子の変わり果てた姿に涙するおば、甲府空襲の恐怖で震えがとまらなかったこと……。

 跡部さんは「75年前も今も、同じ星を見ることができる。ベガを通して、戦時中の人々と戦争を知らない人々がつながるきっかけになってほしい」と願う。

 約27分間。ユーチューブチャンネル「星つむぎの村」で見られる。15日午後7~8時には、音楽を担当した作曲家でピアニストの小林真人さんと高橋さんの語りによるコンサートを配信する。(市川由佳子)