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 帯広農(北海道)のエース井村塁投手(3年)は、地元の十勝牛の皮革でできたグラブを手に、甲子園で戦う。

 グラブの贈り主は、同校で選手だった二つ年上の兄・陸さん(19)だ。幕別町の実家でビートや小麦、じゃがいもなどを育てている畑作農家の陸さん。「十勝の学校らしいグラブで戦って欲しい」という思いで、農業のない冬にアルバイトで購入資金をため、昨年12月に贈った。

 井村選手は「投げるとき、左手にぎゅっと力を入れると手に合わせてつぶれてくれる。球に力が込めやすくなって、このグラブで投げると良い球がいく」と話す。

 陸上をしていた井村選手が中学で野球を始めたきっかけは、陸さんだった。帯広農の選手として活躍していた陸さんが、試合後にチームメートや観客と喜びを分かち合う姿を見て魅力を感じた。

 高校では井村選手が1年生の時に陸さんが3年生。陸さんの引退試合になった夏の十勝地区大会2回戦では、3番中堅手が兄、途中出場の8番左翼手が井村選手だった。試合は延長十一回にサヨナラ負け。負けた瞬間、自分の守備位置から見えた兄の悔しそうな表情を覚えている。

 4月中旬に休校で帰省した時も、一緒にキャッチボールをした。選抜大会がなくなり、夏の大会も見通せず落ち込んでいたが、「夏までそのグラブを使い切ってくれよ」と励ましてくれた。「このグラブで甲子園のマウンドに立つ姿を見て欲しい。兄に恥ずかしくない結果を残します」。16日、恩返しのマウンドに臨む。(前田健汰)