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 戦後75年。戦争体験者やその遺族が高齢化し、解散する遺族会も各地で出てきている。戦争の記憶をどう継承していくか、官民で模索が続く。民間人や外国籍の人たちへの戦後補償など、いまだ解決していない戦後処理の問題も多い。

「風化させない」気迫も薄れ

 「続けたかったんですけどね」。今年3月に解散した静岡県の「西伊豆町遺族会」の会長、西宮恂夫(よしお)さん(76)はぽつりと言う。

 同町4地区で200人いた会員は、地区ごとに抜けていき、この1年で半数に減った。「遺族の『風化させない』という気迫もなくなってきた」と話す。

 西宮さんの叔父の1人は、「史上最悪の作戦」と言われた、ビルマ(現・ミャンマー)のインパール作戦で亡くなった。遺骨も戻らず、「残酷な死に方だった」とだけ伝えられた。

 町には特攻艇を格納するために掘られた洞窟が残り、遺族会が手入れしていた忠魂碑もある。「地元と戦争のつながりを知ることで、平和への思いが生まれると思う。草が生い茂った忠魂碑では慰霊もできず、何も感じないのではないか」と今後への不安を口にする。

 「青森市戦災者遺族会」も発足時に80人いた会員が10人に減り、3月に解散。4年前には会の要望を受ける形で、青森市に「平和の日条例」が制定された。毎年7月に慰霊式など平和事業が催される。会長の大坂昭さん(76)は「会がなくなっても、そういう日があれば、戦争体験は継承される。そう信じています」。

遺児は平均79歳

 被爆者団体にも解散の波は押し寄せる。広島県安芸高田市の「向原(むかいはら)町原爆被害者友の会」は被爆75年となった8月6日、40年以上の活動に幕を閉じた。設立時に約500人いた会員は、約130人に。会長の玉川祐光さん(88)は、20年前から地元の学校などで語り部活動を続けてきた。「体が動く限りは続けたい」と話す。和歌山県でも5年前に「県原爆被災者の会」が解散。元会員の阪口哲三さん(94)は「県外にはまだ存続している組織がある。核廃絶を訴え続けてほしい」という。

 日本遺族会によると、全国の遺族会の会員は、1967年の125万世帯から、2019年には57万世帯まで半減した。戦没者の妻の平均年齢は96歳、遺児も79歳と高齢化が進む。

 遺族会が管理する慰霊碑も多い。遺族会の活動がしぼむことで、地元の戦災や誰が出征したのかという郷土史が埋もれることへの懸念もある。日本遺族会では、17年に戦没者の孫やひ孫世代でつくる青年部を発足させた。慰霊や遺骨収集事業だけでなく、戦争の記憶の継承にも力を入れる。

 札幌市の会社社長、西村浩一さん(49)は昨年5月、「アッツ島戦没者慰霊の会」を設立した。祖父は米軍の猛攻を受けたアッツ島で戦死。世代を超えても慰霊祭が続けられるよう、遺族に限定せず誰もが慰霊できる集まりを目指す。今年も慰霊祭を開き、15人ほどが集まったという。

国が「語り部育成」

 厚生労働省は16年度から、語り部育成事業に乗り出した。沖縄や広島・長崎などで同様の事業が実施されているが、国としては初の試みだ。

 語り部は3年間、元兵士や遺族らの体験を聞き取り、研修を重ねる。昨秋、20~60代の26人が誕生。現在も38人が研修中だ。語り部となった小暮倫子さん(26)は「自分が語ることで同世代が関心を持つきっかけになればうれしい」と話す。

 立命館大学国際平和ミュージアム(京都市)の安斎育郎名誉館長は「戦争の継承は、個の記憶を社会的記憶にすること」と言う。平和資料館もこの役割を担う。

 ただ、新型コロナウイルスの影響で臨時休業を余儀なくされ、安斎さんが7月に各地の資料館にアンケートしたところ、回答があった59館のうち37%が「財政的に困難」と答え、5館が閉館を検討していると回答したという。一方、インターネット上で資料を公開したり、語り部活動をしたりする「バーチャルミュージアム」は活発化した。安斎さんは「高齢になり外には出られないが、家の中でなら語ることができるという戦争体験者や遺族も増えている。電子空間上で戦争を伝える方法を考える時期ではないか」と話している。(黒田壮吉、新垣卓也、江戸川夏樹)

 戦後75年をへて、なお戦争被害の訴えは続いている。12日には戦争被害者4団体が国会内で共同記者会見を開き、「残された戦後処理のすみやかな解決を求める」と訴えた。

「なぜ民間人を排除するのか」「私たちには時間がない」――。いまなお残る戦後処理の問題。75年という時が流れるなか、被害者団体は早期対処を強く求めています。

 記者会見したのは①全国の空襲…

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