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 天皇陛下は戦没者追悼式の「おことば」で、新型コロナウイルスの感染拡大について触れた。お住まいの赤坂御所に専門家らを招いた「進講」の場で、感染防止に取り組む人たちへのねぎらいなどを述べることはあったが、公の場で言及したのは初めてだ。

 戦後75年の歩みを「多くの苦難」があったと振り返った後で、コロナ禍の今を「新たな苦難」と表現。手を携えて困難な状況を乗り越え「人々の幸せと平和を希求し続けていくことを心から願います」と続けた。

 新型コロナは皇室の活動に大きく影響し、行事や式典の中止が相次いでいる。全国各地をめぐり、国民に寄り添う――。そんな象徴としての姿勢を示せないなかで、「国民と苦楽を共にする」という思いをどう伝えていくか。今回のおことばはその機会のひとつと考えたのかもしれない。

 ただ、今回は戦没者を慰霊する場だ。代替わり前も天皇がおことばを述べてきたが、自然災害や社会情勢に言及することはなかった。それだけに、新型コロナへの言及が盛り込まれたことに、戸惑いを感じる人もいた。

 追悼式に参加し、おことばを聞いた80代の遺族の一人は「今流というか、今の方だなぁと思った。特別な行事であっても、今の情勢を気になさったのだと思う」と感想を語った。

 新型コロナに言及したおことばについて、皇室を研究する河西秀哉・名古屋大学大学院准教授(歴史学)は「(陛下は)コロナ禍も戦時下も、国民が苦難に直面しているという意味では同じ状況にあると考えていると感じる」という。「平和の継続を求めていくためにも、まずはコロナ禍で国民の生活が脅かされている現状を共に乗り越えよう。そう国民に強く伝えたかったのではないか」と話した。(長谷文)