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(16日、甲子園交流試合 帯広農4-1健大高崎)

 2年前に大観衆を沸かせた金足農(秋田)の記憶も色あせない2020年、保護者らだけが静かに見守る甲子園で再び「農業」が躍動した。

 帯広農の一塁走者、佐伯にこの日2度目のエンドランのサインが出た。三回1死一塁。盗塁死となった一回のイメージはもう捨てた。「投手の癖は大体分かっていた」。完璧なスタートで駆けだした。

 打者の前田はボール球を見送ったが、二塁は悠々セーフ。捕手の悪送球も誘って三塁まで進むと、次の球で前田がスクイズ。大きな追加点が入った。

 バント+足。これが「帯農」スタイルだ。

 ヒントは「金農旋風」の原動力となったバント攻撃。「長打はなくてもバントでチャンスを作り、1本で返す。自分たちでもできると自信をもらった」と、主将の井村は振り返る。

 昨夏、バスとフェリーを乗り継いで金足農へ練習試合に向かった。学んだのは全力疾走や強い打球を体を張って止める愚直な姿勢。前田監督は「こういう野球を見習わないと、と伝統を感じた」。

 冬場は雪を踏み固めたグラウンドで守備練習。雪上を滑るように転がる打球は「土の上より球足が速いんです」と佐伯。内野陣は鋭い打球をしっかり受け止め、3併殺。井村と水上の2投手は100キロ前後の変化球で相手を翻弄(ほんろう)した。

 「甲子園で野球ができて、しかも勝てて本当にうれしいです」と井村。創立100周年。豪快な打棒や豪速球がなくとも、帯農の風は確かに吹いた。(山口史朗