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 甲子園高校野球交流試合で、17日の第2試合に登場した尽誠学園(香川)の左翼手、福島武颯士(むさし)君(3年)は頭髪がない。全身の毛が抜ける脱毛症を患っている。以前は帽子が手放せなかったが、今は「同じ病気で悩む全国の人に、甲子園で全力で走る僕の姿を見てほしい」と言う。

 大阪府内の小学校に通い、小学4年で野球チームに入った。病気が判明したのはその頃だ。美容師が気づき、母に告げた。間もなく毛髪がなくなり、外出時はいつも帽子をかぶった。時に親に当たった。

 中学1年の時、祖父に言われた。「ヒチョリみたいな選手になればええやん」

 森本稀哲(ひちょり)選手。脱毛症を患いながら、日本ハムなどで活躍した。俊足と広い守備範囲を誇り、時にアニメのキャラに変装して観客を笑わせていた。

 右打ちの外野手、足の速さ。周りを盛り上げるキャラクターは違うが、自分に似ていると思った。少し気持ちが楽になった。

 尽誠学園に入学する前、同じ野球部に入ることになった仲間に、自身の病気のことをLINEで伝えた。「全然大丈夫だよ」と返ってきた。西村太監督(41)からは「勇気を出して、帽子を取って練習に来い」と言われた。

 徐々に、自分の見た目をコンプレックスだと思わなくなった。グラウンドだけでなく普段の生活でも、帽子をかぶらずに過ごすようになった。

 昨秋の新チームでレギュラーに。県大会で優勝し、選抜大会が視野に入ってきた頃に思った。「甲子園に行けば、全国の人がテレビで、こういう僕がプレーしている姿を見るんだ」

 香川県の独自大会では、俊足を生かして内野安打を放ち、準決勝では「人生初」の満塁弾も放った。西村監督は「あいつのプレーでチームが何度も活気づいた」と言う。

 17日、夢の舞台に立った。「僕は森本選手に力をもらった。今度は僕が、同じ病気を持つ人の心が楽になるようなプレーをしたい」(平岡春人)