[PR]

 愛知県内の公立中学校の男子生徒と保護者が、以前通っていた公立小で障害を理由に水泳の授業に参加できなかったり、校外学習で保護者の付き添いを求められたりしたことは差別にあたるなどとして、自治体に330万円の賠償を求めた訴訟の判決が19日、名古屋地裁で言い渡される。

 生徒は日常的に医療器具を必要とする「医療的ケア児」。原告側は裁判で、学校にたんの吸引器具の設置も求めている。原告側の代理人によると、学校に器具の設置を求める訴訟は珍しいという。

 訴状などによると、生徒は生後間もない頃に声門下狭窄(きょうさく)症で気管切開手術を受けた。気管にチューブを挿入し、今は学校にいる間に1日1~2回、たんの吸引が必要という。

 生徒が通った小学校は、支援員を配置した上で、たん吸引器を毎日保護者が学校へ持参することなどを登校の条件とした。保護者は入学時から高学年になるまで4年8カ月間、毎日器具を運んだという。

 原告側は、こうした条件は不当な差別的扱いで、障害者差別解消法に違反すると主張。水泳の授業に参加できなかったことや、校外学習に保護者の付き添いを求められたことも同様で、教育を受ける権利も侵害されたと訴える。

 一方、自治体側は「障害者差別解消法からただちに器具を購入し備え置く義務を根拠づけることはできない」などと反論。校外学習や水泳の授業もできる限りの対応をし、最終的に実施できているとして「違法性はない」と主張している。

 医療的ケア児をめぐっては、2016年に障害者総合支援法が改正され、自治体に支援の努力義務が課せられた。だが保護者が授業中の待機や登下校の付き添いを求められるケースは多いという。

 生徒の父親は「学校の先生が安全性と結びつけて『できない』と決めつけると、子どもが成長してからもそういう対応を受け続ける。それを少しでも取り除きたい。障害をもつ子どもが生きやすい世の中は誰にでも生きやすい世の中だと考えています」と裁判に込めた思いを話す。

 一般社団法人「全国重症児者デイサービス・ネットワーク」の鈴木由夫代表理事は「以前に比べれば医療的ケア児が通常学級に通うという選択肢は広がってきたが、過度の制限をし、運用上の問題が出ている」と指摘する。

 全国医療的ケア児者支援協議会事務局の森下倫朗さんは「教育現場でのリスクは、保護者と学校と医者が緊急時の対応を事前に確認することで軽減できる」と話した。(大野晴香、小松万希子)

 〈医療的ケア児〉 人工呼吸器やたんの吸引、胃ろうなどの生活支援が日常的に必要な子ども。文部科学省のまとめでは、2019年度は全国で9845人が幼稚園や小中高校に在籍。うち700人は通常学級に在籍していた。