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 夏休みの子どもたちに、キャンプやエコツアーを通じて自然の中で学ぶ機会を提供する自然学校。その多くが新型コロナウイルスの影響で存続の危機に直面している。「生きる力」を養う学びの場を守ろうと、クラウドファンディングによる支援の動きが広がる。

 「突っ込め!」「ウワー」「怖いー」

 8日午後、日本海に面した富山県高岡市のキャンプ場。NPO法人「ガイア自然学校とやま」(富山市)が主催する1泊2日のキャンプで、県内の幼稚園児や小学生が波打ち際で歓声を上げていた。海遊びのほか自炊も体験する。

 ガイアのスタッフ平本友香さん(32)によると、「『家族でどこも行けないので』と話す親御さんもいた」。この日は定員(20人)を上回る23人が参加。熱中症の恐れがあるためマスクの着用は強制しないが、検温や手洗いなどコロナ対策は怠らない。

 6月末までの約3カ月間、新型コロナの感染拡大で、週末のキャンプ活動をほとんど中止した。収入は前年の半分以下に落ち込んだという。

 代表の守屋謙さん(41)は第2波への不安を口にする。「感染者が増えたら軒並みキャンセルになる。本当に水物」。6月末の再開後の予約は好調だが、全国的に感染が拡大しつつあるのが気がかりだ。外出を自粛すれば、秋や冬に予定するたき火遊びやスキーキャンプも難しくなる。「資金が残っているか、怖さが常にある」

 状況はNPOだけでなく個人、企業が運営する各地の自然学校も同じだ。

 長野県南部、人口約1600人の泰阜(やすおか)村。NPO法人「グリーンウッド自然体験教育センター」が毎夏開く野外キャンプには、のべ約1千人の小中学生と約300人のボランティアが都会などからやってきたが、今夏はスタート以来、四半世紀で初めて中止になった。いつもなら子どもたちの歓声が響くキャンプサイトは、静まり返っている。

 辻英之代表は「コロナ禍で自然との関係を改めて考えるべき時に、子どもたちを自然に迎えられないことが苦しい」と言う。「自然学校は自然と人間をつなぐ存在。新たな社会づくりの担い手を育てるためにも何とか続けたい」

経営状況「予想以上に厳しい」

 自然体験を普及する団体や個人でつくる日本環境教育フォーラム(東京都)などは4月、全国の自然学校に新型コロナによる経営状況を尋ねるアンケートを実施し、全国236団体が回答。4月以降、プログラムの中止などで損失の見込み額が総額約18億円にのぼると試算した。6割超の団体が持続化給付金や雇用調整助成金を申請したり、申請を検討したりしているとし、「人件費確保の見通しが立っていない」といった切実な声が寄せられた。

 「予想以上に厳しい。小規模の運営団体が多く、子どもの長期休みに活動できないと経営に大きく響く」。同フォーラム事務局長の加藤超大(たつひろ)さん(30)は危機感を口にする。活動を再開した団体でも長期プログラムは難しく、日帰りや1泊2日が限度。参加者を減らす団体も多いという。

 そこで、同フォーラムなどは7月、クラウドファンディング「自然学校エイド基金」を立ち上げ、支援に乗り出した。寄付金は基金に名を連ねる72団体に分配する仕組みで、特定の団体への寄付も受け付ける。

 加藤さんは「自然の中では、自分で行動を決めたり、正解がない中で試行錯誤したりする機会が多い。それがなくなれば生きる力の低下につながる」。基金を通じ、改めて自然学校の役割の大きさも知ってもらいたいという。

 寄付額は7月末に目標の500万円を突破。1千万円を次の目標にと10月中旬まで寄付を募る。「キャンプで子どもたちはいつも一回り成長して帰ってきます。これからも楽しみにしています」「自然を愛する子どもたちのためにがんばって」。支援した人たちからは、そんなエールが届いている。

 詳細は基金の専用ページ(https://a-port.asahi.com/projects/nature-school-aid/別ウインドウで開きます)から。(竹田和博、編集委員・石井徹