戸田政考、今直也
拡大するラグビー日本代表の松島幸太朗選手
便に含まれる腸内細菌は、体調を整えるサプリ開発や難病の治療など、さまざまな可能性を秘めている。人呼んで「茶色いダイヤ」。企業や研究者は、どこまでこのダイヤを光らせることができるのか。
「うんちちょうだい」
浦和レッズで長年プレーしたサッカー元日本代表の鈴木啓太さん(39)は、国内の一流アスリートらに営業している。2015年シーズンで現役を引退し、現在の肩書はアスリートの腸内環境を研究する企業「AuB(オーブ)」の社長だ。
「便は『茶色いダイヤ』と注目を集めています」
鈴木さんは投資家たちにそう説明してきた。人の腸管には約1千種類、100兆個もの腸内細菌が生息しているとされ、便には多くの腸内細菌が含まれる。細菌が腸内で作る群れは「腸内細菌叢(そう)(腸内フローラ)」と呼ばれ、その乱れは、腸の病気だけでなく、アレルギーや精神疾患にも関係していると言われている。
拡大する引退を表明し、試合後のセレモニーで花束を掲げる鈴木啓太選手(当時)=2015年11月、埼玉スタジアム、長島一浩撮影
第二の人生を便にかけているのは、自身のアスリートとしての経験が大きい。
調理師の資格を持つ母親からは、「便をよく見なさい」と言われ育った。日々の便の観察だけでなく、食事をあったかいお茶で終えたり、腹巻きをして寝たり。海外遠征では梅干しや緑茶を持って行くなど、腸のケアを欠かさなかった。
2004年のアテネ五輪のアジア最終予選のアラブ首長国連邦への遠征では、食事や水などの環境が普段と違うせいか、選手23人のうち18人が下痢を訴えた。試合前までトイレにこもる選手がいる一方、鈴木さんはいつも通りに腸をケアしていたせいか、下痢にならなかった。日頃から食事と運動に気をつかうアスリートの腸に、健康のひけつがあると考えた。
便の提供を持ちかけると、ちょ…
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朝日新聞社会部