構成・榊原一生
目が見えた記憶のないエースと徐々に視力を失っていった新鋭。そんな2人が、世界のトップスイマーとして競い合っている。パラ水泳の視覚障害が最も重いクラス(S11)で活躍する木村敬一(東京ガス)と、富田宇宙(EYジャパン/日体大大学院)だ。東京パラリンピックに出場すれば、金メダルを争うライバル同士だが、会えばいつも楽しそうに談笑し、練習では技術を共有する。2人がお互いについて語り合った。
木村は北京パラリンピックから3大会連続出場。銀、銅それぞれ三つずつ計六つのメダルを持つ。一方の富田はパラリンピック出場経験がない。徐々に視力を失い、2017年に木村の障害クラスに変更となったことで、タイムにおけるクラス内のランキングが向上。障害の重度化によりメダル候補にのし上がった。
――2人にとってお互いの存在は。
【富田(以下、富)】 やっぱり憧れのパラリンピアンですよ。
【木村(以下、木)】 お世辞でもうれしい。
【富】 彼は視覚障害者としてもパラリンピアンとしても大大大先輩。僕は中途障害なんですが、障害を受け入れる障害受容が早いと言われる。それは木村くんたちと関わることで、こうやって生きていけるんだなと勇気づけられるところがあったから。彼を見ていると、色々なことがどうにかなるし、気にしてもしょうがないと教えてくれる。僕の生きる道しるべです。
【木】 宇宙さんはとにかく切り替えが早い。何かができなくなっていくとか、何かやってきたことを失うとか、そういう経験は僕らはしたことがない。だから、そのしんどさは想像がつかないんですよ。それを乗り越え、新しい人生を新しい自分として楽しみ直せているところが、すごく尊敬できるなと思います。
――金メダルを争うライバル同士。なぜそんなに仲良しなのですか。
【木】 僕は見えない世界で育…
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