[PR]

 四つの市民襲撃事件で殺人罪などに問われた特定危険指定暴力団・工藤会の最高幹部2人の第56回公判が21日、福岡地裁であり、看護師刺傷事件の被告人質問が始まった。トップで総裁の野村悟被告(73)は看護師の言動に怒りを覚えたと認めたが、事件への関与については否定した。

 事件は2013年1月に福岡市博多区の路上で起きた。野村被告が局部の増大手術と脱毛施術を受けたクリニックの担当看護師が頭などを刺された。検察側は、野村被告が看護師の態度に怒りを募らせ、ナンバー2で会長の田上不美夫被告(64)と襲撃を決めたと指摘している。

 この日の被告人質問で野村被告は、看護師に「入れ墨に比べたら痛くないでしょ」と言われてどう思ったか聞かれると、「カチンときた」と答えた。だが後日、クリニックに苦情を伝え、看護師から術後の炎症について謝罪を受けた後は「一切わだかまりはなかった」と述べた。

 一方、事件の指示や承諾については否定したが、「(術後の炎症について)私が愚痴ったことが組員に伝わって変なふうになったかなとも考えられる」と述べた。その上で、「私がお世話になっている看護師に危害を加えるのはとんでもない」と語った。

 市民の襲撃に関わった組員は処分の対象になるとの認識も示したが「私には権限はありません。工藤会の執行部が考えると思う」と述べた。

【野村被告への被告人質問の主なやりとり】

●クリニックでの施術

――施術を受けるクリニックは、誰が見つけたのか

 組員。「脱毛するところを見つけてくれんか」と頼みました。

――クリニックではどんな治療を受けたか

 顔と下腹部にレーザー(脱毛施術)を受けました。

――それ以外は

 (増大手術のため)亀頭に注射を4本打ちました。

――(増大手術を受ける)いきさつは

 (脱毛施術の)レーザーを当てた後、待機室で(増大手術の)パンフレットを見て「これなんかね」と聞いたら、看護師が説明してくれました。「俺もこれしてくれんかね」と頼みました。

●看護師の発言について

――2012年10月15日にはどんなことがあった

 脱毛のレーザーを当てました。レーザーが強くなったと思ったら、体がピクッとなった。

――誰が担当したのか

 (被害者の)看護師です。

――何と言った

 「あーら、野村さんでも痛いんですか。入れ墨に比べたら痛くないでしょ」と。

――どう思った

 ちょっとカチンときました。

――患部の状態は

 赤みが増す状態でした。

――痛みは

 ヒリヒリして痛かった。

――18日は

 火ふくれ(炎症)していました。痛みが激しかった。

――どうすることにしたのか

 皮膚科に行きました。

――結果は

 関係のないところまで火ふくれができていました。

――レーザーの話は

 「看護師が当てている」と言うと「医療機械は医師やないとだめですよ」と言われました。

――今後の施術についてアドバイスはあったか

 「次のレーザーは中止した方がいい」と言われました。

――その後はどこに

 クリニックに行きました。

●クリニックへの苦情

――クリニックに看護師はいたか

 いませんでした。別の看護師と男性職員がいました。

――どんなことを言ったか

 わざとレーザーを強くしたのではないかと言いました。(注射は)1本か2本にしようと看護師が言っていたが、クレジットカードを預けとったから、4本になっとるんやないかと言いました。レーザーの医療機械は医者が使うものと聞いていたので「弁護士の先生に相談してもええんよ」と言いました。

――「良心的ではない」と言ったか

 全体的に良心的ではないと言ったと思います。

――「ああいう人になったらいけんよ」とは

 言ったと思います。

――看護師に腹が立っていたか

 腹が立っていました。

――クリニックを出る時に腹立ちは

 かなりスーッと引いていました。

●看護師からの謝罪と説明

――その後の看護師との電話のやり取りは

 治療の仕方が悪く「すみませんでした」と言っていました。

――どうして炎症が起こったかについては

 「野村さん、風呂なんか入っていないでしょうね」と言われて「サウナに入ったよ」と答えると「それはだめですよ。説明書にも書いてあります」と言われました。説明書には入浴禁止と書いてありました。

――どう思った?

 これは自分の間違いもあるなと。

●事件後のクリニックでの会話

――事件後にクリニックに行ってどんなことがあったか

 「今日はいつもの看護師さんは休みです。(施術は)私でいいですか」と言われました。「あんたでできるんか」と聞くと「できます」と言うので「できるならいいよ」と。「いつもの看護師さんどうしたん」と聞いたら「事故に遭いました」と言われ「車の事故かね」と聞きました。「いえ、通り魔です」と言われ、刺されるか、切られるかする事故に遭ったかと思いました。

――その後は

 「(事件は)どこであったん」と聞くと「家の近く」と。「家はこっち(北九州)かね」と聞くと「いや、博多です。仕事の帰りに事故に遭いました」と答えました。

――通院が終了した日は

 「ありがとうございました」という気持ちでお菓子をふた袋下げてお礼を言いました。一つはスタッフで召し上がってください、もう一つは看護師にお世話になりましたと渡しました。

――看護師は「もらっていない」と言っているが

 患者が多いので忘れたのでは。

●事件への関与

――看護師を傷つけることを指示したか

 いえ、そんなことはありません。

――承諾したことは

 ありません。

――指示や承諾以外で何らかの形で関与したことは

 ありません。

●組員の関与

――逮捕された時、警察や検察から工藤会組員の犯行と聞かされてどう思ったか

 絶対にそれはないと思いました。

――いま現在はどう思っているか

 工藤会の組員が関わっていたんやなと思っています。

――いま何かこの事件のきっかけで思い当たることは

 深く考えたら、私が愚痴ったことが組員に伝わって変なふうになったんかなとも考えられます。

――愚痴を言った場面については

 風呂上がりに脱衣所で着替える前に薬を塗ります。脱衣所には部屋住みの人間が4人くらいいる。看護師の顔を思い浮かべながら「あのオバハンが」とか言いながら(薬を)塗っていたと思います。

――当時は施術に怒りを覚えていた時期

 そうですね。

――脱衣所で愚痴を言ったことがそこにいた人以外に伝わる可能性は

 あると思います。

――仮定の話だが、工藤会の組員の誰かが看護師を襲う計画を進めていることを知ったらどうしていた

 止めています。私がお世話になっている看護師に危害を加えるのはとんでもない。

――組員はどうして事件を起こしたと思うか

 私は不思議でならんのです。なんでそんなことしたんやろうかと思います。私の愚痴が原因やないか、それくらいしか考えられません。

――被害者が襲われて野村被告にいいことはない。どうして無断で勝手に事件を起こしたと思うか

 理解しかねますね。はぁ……。

――襲った人たちには

 ちょっと許しがたいようなものがありますね。何の理由もなく他人を傷つけることは許せません。まして世話になっとる看護師を。通り魔以下の事件です。許せんです。

●一般市民への襲撃について

――これまでの公判で「工藤会では堅気(一般市民)を襲撃しても処分の対象にならない」と言っていた。

 それは間違いない。事情によるんやないですか。

――女性や子どもを襲ってはいけないと

 常識的に分かると思います。事情があれば分かりませんけど、常識的に考えてもらわんといかんのはあります。

――破ったら処分を受ける

 組員が通り魔をすれば処分になる。看護師が被害者であれば、世話になっとる人ですから、これは絶対に処分の対象になると思います。

――組員は処分の対象になる

 なると思います。

――「工藤会憲法」では堅気に迷惑をかけてはいけないと。女性を襲うことは

 許されませんね。

――しかし処分を受けていない

 処分については、私はどうせいこうせいと言う権限はありませんし、収容されてどうすることもできん。執行部が考えると思います。