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 新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込む地元経済救済策をめぐり、さいたま市の清水勇人市長が議会の審議や議決を経ない「専決処分」でプレミアム付き商品券発行などの施策を進め、与野党議員から「議会軽視だ」と批判の声が上がっている。議会を開く時間がないほどの緊急性の有無のほか、経費や経済効果などの内容も妥当性が問われている。2回にわたり、報告する。

 「どうしてそんなに急ぐ必要があるのか。10億円を超える大型経済対策なのに議長らにも何の相談もなかったと聞いている」。市議会で野党の自民会派前団長の桶本大輔市議は憤る。

 1万円で購入し、1万2千円分の買い物ができるプレミアム付き商品券の発行について、キャッシュレス決済によるポイント還元策など他の経済対策とともに清水市長が記者会見で発表したのは7月28日。利用開始は12月を予定する。

 コロナのあおりを受けた経済の立て直しに自治体はどこも苦心する。現金支給とともにプレミアム付き商品券を発行するところも多い。ただ、議会に諮らない専決処分はあまり聞かない。

 複数のさいたま市議によると、新たな経済対策を知らされたのは、会見の前日。各市議の事務所のファクスなどに流れてきた紙切れ1枚で専決処分で実施する内容が書かれていた。

 市長に近い会派の市議も疑問を呈する。自民真政幹事長の高子景市議は「何を根拠に専決処分なのか」。別の与党会派の市議も「コロナ対策なら何でもOKと思うのは間違い。市民が本当に望んだのか調べたのか」と首をかしげる。

 専決処分について、地方自治法は「特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき」などと規定し、議会のお墨付きを得ずに事後報告だけで予算の執行などができる。

 実施まで4カ月以上あり、「緊急を要する」事案かどうかについて、清水市長は発表時に「紙の確保など事務作業に相当な時間を要する」と説明した。

 しかし、「それなら8月初めに臨時議会を開く手もあった」と市議の一人は主張する。実際のところ、同様の商品券をすでに発行している川崎市は7月20日の利用開始に対し、5月の臨時市議会で同15日に商品券発行に関する費用を含む一般会計補正予算案を可決した。

 札幌市も8月5日スタートを踏まえ、6月10日に市議会で同じく補正予算案を可決。両市とも議会の審議と採決を経て2カ月前後で実施にこぎつけた。

 また、さいたま市は60万冊の商品券発行事業を民間に委託する費用として7億1千万円余りを計上する。一方、50万冊発行の札幌市は約2億8千万円、87万冊発行の川崎市でも約3億6千万円だ。

 プレミアム商品券は昨年10月の消費増税の際にも、国庫支出金で全国一律に実施されたが、さいたま市は77万冊の発行予定に対して、委託事業も含めた必要経費は市が負担した郵便料などを合わせても4億5千万円余り。今回はその1・5倍以上となっている。

 市商業振興課は「印刷会社など3~4社に見積もりを取った結果」と説明する。

 コロナ対策の委託費を巡っては、政府の持続化給付金事業や観光支援策の「Go To トラベル」でその不透明さや費用の高さが問題となったばかり。さいたま市のプレミアム付き商品券の総予算は約19億円。委託費はその3分の1以上を占める。(森治文)

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 プレミアム付き商品券 さいたま市の場合、1万円で購入する1冊に額面1千円と500円の券が各8枚つづられている。地元資本の店舗での消費促進のため、500円券は大型店では使えない専用券となる。差額の2千円分を市が負担し、消費者が得になる仕組み。

 1人5冊までインターネットとはがきで申し込みを受け付け、応募多数の場合は抽選。当選者に希望冊数を郵送する。60万冊の計12億円が消費者に還元される。一方、業務委託する必要経費には商品券や取り扱い加盟店に貼るステッカーやポスターの作製、広報宣伝やコールセンター業務などが含まれる。