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 昨年7月の参院選広島選挙区をめぐる買収事件で、公職選挙法違反の罪に問われた前法相で衆院議員の河井克行被告(57)と妻で参院議員の案里被告(46)=いずれも自民を離党=は25日、東京地裁(高橋康明裁判長)であった初公判で、いずれも無罪を主張した。検察側は冒頭陳述で、現金を受け取ったとされる地元議員や後援会関係者ら100人全員の実名を明かし、現金提供は「選挙運動の報酬だった」と指摘した。

 夫妻は罪状認否で、現金提供の事実はおおむね認めた上で、「選挙運動の報酬として現金を渡したことはない」などと述べ、ともに起訴内容を否認した。

 検察側は冒頭陳述で、克行議員が選挙運動全般を取り仕切る「総括主宰者」の立場だったと指摘。選挙情勢が厳しいと予想し、ほぼ接点のなかった人や疎遠な人にも「なりふり構わず、選挙運動の報酬として現金供与した」と指摘した。

 検察側はまた、克行議員が、県議らへの現金提供を自身か案里議員のどちらが担当するかを名簿に記載していたほか、これとは別に対象者や金額を記したリストを作成していたと指摘した。車上運動員への違法報酬疑惑が報道された後の昨年11月には、国会議員会館や議員宿舎、広島市内の自宅のパソコン内に保存されていたリストの消去を業者に依頼。ただ、議員会館のパソコンには消去されなかったリストが残っていた。案里議員も昨年12月ごろ、県議の1人に電話し、現金提供はなかったとの口裏合わせを依頼した、とした。現金の原資については触れなかった。

 これに対し、夫妻の弁護側は地元議員らに配っていた現金は統一地方選の陣中見舞いや当選祝い、寄付などにあたるとし、適法な政治活動の支出だったと反論した。

 さらに克行議員の弁護側は、検察が現金を受け取ったとされる地元議員ら100人全員の刑事処分を見送ったことを「同種事例に照らして著しく均衡を欠く」と批判。「公訴権の乱用だ」として公訴棄却(裁判の打ち切り)も主張した。夫妻の弁護人はこの日、3回目となる保釈請求をした。

 冒頭陳述によると、克行議員は昨年3月下旬~8月1日、計128回にわたり、地元議員ら計100人に対し、参院選に立候補を表明していた案里議員への票の取りまとめを依頼する趣旨で計約2900万円を供与。案里議員は克行議員と共謀し、このうち地元議員5人に計170万円を渡した。内訳は、県議や市町議、首長ら44人に計2140万円▽克行議員の後援会メンバーら50人に計385万円▽選挙事務所のスタッフ6人に計約376万円としている。

 夫妻の裁判は12月18日まで計55回の公判期日が指定されており、9月以降、地元議員ら120人前後の証人尋問が予定されている。(酒本友紀子、新屋絵理)