編集委員・秋山訓子
拡大するシングルマザーと永田町⑥ 女たちの税制革命
「どうしても父親の名前と住所を書かなくちゃいけないんでしょうか」
2カ月ほど前、ひとり親を支援するNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」に1本の電話がかかってきた。電話の主は未婚のシングルマザー。ひとり親家庭に支給される児童扶養手当の申請書類についての相談だった。
申請書類には、子どもの父親の名前と住所を書く欄がある。事実婚でなく父親が不在であることを証明するためだが、「子どもの父親との間には複雑な事情を抱えているケースも多く、当事者からすると、嫌がらせのようなものだ」と、同法人の理事長赤石千衣子は言う。
拡大する児童扶養手当を申請するとき、事実婚でないことを確認する調書には、未婚のシングルマザーの場合、「父の氏名住所」を書く欄がある。これは厚生労働省から自治体に出された通知で、これをもとに自治体は調書を作る
このシングルマザーも、父親に関して記入するのが苦痛だった。書き込めないまま申請しなかった。とはいえ、生活は楽ではない。「何とかならないものか」と赤石たちを頼ったのだ。
赤石は「家族のあり方や社会が変化しているのに、ひとり親に関する制度は奇異なものが温存されているんです」と指摘する。その「奇異なもの」の象徴的な制度の一つが、ひとり親への寡婦(夫)控除――。赤石たちはそう考えてきた。
昨年末の税制改正で、それまで死別や離別に限られていた寡婦控除の対象が広がった。未婚のシングルマザーやシングルファザーも、控除を受けられるようになった。今年度から申請が受け付けられる。「奇異なもの」の一つがクリアされた。
税制改正の原動力になったのは…
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