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 新婚旅行で西アフリカの島国を訪れ、新型コロナウイルスの影響で国外に出られなくなったカップルが、その国のオリンピック委員会の親善大使に――。そんな体験をしているのが、東京都在住の片岡力也さん(29)、あゆみさん(30)夫妻だ。「想像しなかったことが起きている」。2人は来夏の東京オリンピック(五輪)で、「第二の故郷」になった小国の選手を応援する未来を思い描く。

 力也さんは旅好きな祖父に連れられ、物心つく前から国内外を旅行していたという。大学卒業後に大企業に就職したが、海外勤務がない部署に配属されると3カ月で退社。以来「死ぬまで旅を続ける」と定め、各国の見どころなどを主に動画で紹介する仕事をして、人があまり行かない世界の秘境を巡ってきた。

 2018年11月にあゆみさんにプロポーズし、指輪の代わりに世界一周できる航空券を贈った。「結婚して世界一周しよう」。19年12月にハネムーンをスタートさせ、今年2月、アフリカ大陸から西方約500キロの北大西洋上に浮かぶ島国、カボベルデに到着した。

 2週間ほど滞在してスペインに向かおうとしたところ、新型コロナの感染拡大で欧州行きの飛行機がキャンセルに。3月中旬には欧州連合(EU)が加盟国の市民以外の入域制限を決めた。「夏までここに残ろう」。2人でそう決めたが、入国時に取ったビザは短期滞在用で、1カ月しかいられない。そこで、国のPR動画を作って公開すれば、貢献が認められて労働ビザが取得できるのではと考えた。色彩豊かな島の特徴をドローンなどで撮影した動画(https://www.instagram.com/p/CDgZRt2l_iB/?igshid=1gj3pp0alrtic別ウインドウで開きます)を作り、地元メディアに「紹介してほしい」とメールを送った。

 すると、あるメディアから「動画だけでなく君たちを紹介する記事を書きたい」と返事がきた。日本人夫妻がカボベルデを世界に発信しようとしている記事が出ると、今度は同国オリンピック委員会から「来年の東京五輪に向けて親善大使になってほしい」という依頼が舞い込んだ。

 同国五輪委員会で東京五輪統括責任者を務めるレオナルド・カンハさんは「五輪は人々の希望の象徴。彼らの物語は、困難で不確かな状況から大きな挑戦をしようとしている現状と重なり合う」と話す。2人には、日本でカボベルデの認知度を高める活動を期待しているという。

 労働ビザは取得できていないが、コロナ禍の特例で長期滞在は認められた。2人は今、近くに海が広がるホテルのPR動画作成を条件に無料で宿泊させてもらっている。少々の遅刻などを気にせず、「ノーストレス」が口癖の国民性がお気に入りだ。力也さんは「主食は米で、治安もいい。これほど愛着を感じた場所はない。東京五輪に行って、両国の架け橋になりたい」と話す。(野村周平)