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 7月28日、米デラウェア州のコミュニティーセンターで壇上に上がったバイデン氏はマスクを取り外し、語り始めた。

 「アメリカの製造業と技術に投資をする。未来はメイド・イン・アメリカだ」

 11月の大統領選に向け、バイデン氏のスローガンは「ビルド・バック・ベター(より良く建て直す)」。トランプ大統領のお株を奪うような国内製造業の復活を唱え、中間層の底上げをはかる。

 民主党の候補者選びでバイデン氏と最後まで争った革新派のサンダース上院議員は、公的国民皆保険の実現や公立大学の無償化など、大きな改革を訴えて若者を中心に支持を得た。これに対し、バイデン氏は急進的な改革と距離を置く。他の議員と交渉を重ね、実現可能な合意を見いだしてきた政治姿勢とも重なる。

 バイデン氏は親しみやすい印象から「アンクル・ジョー(ジョーおじさん)」とも呼ばれ、好感度も強みの一つだ。ただ、「嫌い」という人が少ない代わりに、トランプ氏やサンダース氏のような、熱狂的な支持者が少ないという問題がついてまわる。特に、若者の支持が低調だ。この「熱狂のなさ」は、4年前の大統領選で民主党のクリントン陣営も抱えた課題だった。

 こうした中、バイデン陣営が頼るのは、幅広い層に人気を誇るオバマ前大統領だ。「オバマ・バイデン政権」という表現を使い、バイデン氏が副大統領としてオバマ氏を支えたと強調。オバマ氏がバイデン氏と対談し、「あなたには経験がある。コロナ対策で専門家に耳を傾けるだろうし、途中で対策を投げ出すようなこともしないだろう」と語る映像も公開した。

 ただ、オバマ氏が選挙に出ているわけではない。民主党系政治コンサルタントのアンドリュー・フェルドマン氏は「オバマ政権の副大統領だとは知ってはいても、バイデン氏がどんな人物なのか知らない有権者もいる。バイデン氏は自分自身について語る必要がある」と指摘する。

 一方で、バイデン氏を熱烈に支持する人が少なくても、「反トランプ」のうねりが原動力になるという見方もある。ピューリサーチセンターが6月末に公表した調査では、バイデン氏の支持者のうち、67%が「トランプ氏に反対するために投票する」と答え、「バイデン氏のために投票する」は33%だった。8月、バージニア州アーリントンであった人種差別の抗議デモに参加していたマット・ロイヤーさんは「予備選挙ではウォーレン上院議員を支持していたが、トランプ大統領を倒すため、バイデン氏を支持する」と語った。

 マリスト大世論研究所のリー・ミリンゴフ所長は「今回の選挙はトランプ大統領の信任投票だ」と指摘する。「トランプ氏を退陣させたい人々は、たとえバイデン氏の考えに賛同しなくても支持するだろう。これまでの民主党は党内を一つにまとめるのが困難だったが、バイデン氏は団結した党という強力な武器を手に、選挙に臨む」と語る。(ワシントン=大島隆)