【動画】原発事故を想定した避難訓練で、新型コロナウイルスの感染防止対策も=佐藤常敬撮影
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 福井県にある関西電力の大飯原発3号機(おおい町)と高浜原発4号機(高浜町)の「同時発災」を想定した県原子力防災訓練が27日にあり、国や県、周辺市町、関電など約40機関の約300人と住民約50人が参加した。原発事故の防災訓練では全国で初めて、新型コロナウイルスの感染防止対策を踏まえた広域避難を実施。感染と被曝(ひばく)の両リスクをにらみながらの訓練になった。(佐藤常敬、平野尚紀、佐藤孝之、堀川敬部)

 昨年の県原子力総合防災訓練は2日間で約100機関の約1800人と住民約9千人が参加したが、今年は新型コロナの感染防止のため、規模を縮小した。

 想定は、新型コロナの感染症が発生している中、若狭湾沖を震源とする地震で両原発の外部電源が喪失し、作動した非常用炉心冷却装置による注水もその後不能になる――という重大事故。住民の広域避難などは、県と内閣府が共同で今月策定した「原子力災害における新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン」に即して実施した。

 両町で午前8時半に「警戒事態」の震度6弱を観測。対応拠点の現地対策本部はおおい町の大飯オフサイトセンターに一元化され、高浜町の高浜オフサイトセンターの要員も合流した。

 県や周辺市町、内閣府、自衛隊、海上保安庁、関電などの職員が役割分担をして、被災の情報収集や防護措置の検討にあたるなか、両原発の状況は「施設敷地緊急事態」、さらに「全面緊急事態」へと深刻化。午前11時20分に安倍晋三首相が原子力緊急事態宣言をしたことを受け、原発から5キロ圏の住民の広域避難や30キロ圏の住民の屋内退避などを指示した。

 訓練後、県の現地対策本部長を務めた桜本宏副知事は「訓練を通じて、住民の方には被曝と感染の双方のリスクから身を守るためにどのようなことが必要かを理解してもらえたのではないか」と述べた。

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 おおい町の大島地区では午前10時過ぎ、「自家用車での避難をせず、住居などが倒壊し屋内退避が困難な住民は、はまかぜ交流センターに避難を開始して下さい」と放送が流れ、一時避難開始。地区内外の50人が10~20分ほどで集合した。

 入り口にはフェースガードを着けた職員が、手指の消毒などをした住民に味覚障害などがないかを問う問診票を渡した。記入後、「感染疑い者」「濃厚接触者」「それ以外の避難者」に分け、専用の和室とホールに案内した。

 一時待機場所のホール内には、プライバシーを守りながら待機できる簡易テントを24個設営。通常は家族単位で使うが、一人一つを利用した。

 その後、住民は簡易トイレの設営や施設内の空気を清浄に保つための「陽圧化装置」などを体験。体温をカメラで測定する「サーマルカメラ」で再度検温を受け、27人がバスへ。間隔を空けて座るなどしたため、4台で移動した。

 避難先となったプラザ萬象(敦賀市東洋町)に着いた大島地区の住民は手指を消毒し、順番に検温や問診を受けてホールに入った。

 ホールでは敦賀市職員から「入りきれない場合は車中泊避難も考えられるので、そのスペースも確保している」などの説明を受けた後、指示に従い段ボールベッドなどを組み立てた。

 濃厚接触者や感染疑い者役は別で受け付けし、仕切りで区分けされた廊下を通って個室へ。施設状況によっては、間隔を空けた上で複数人を1部屋に集める可能性もあるという。

 感染疑い者役の公務員城谷佳祐さん(30)は「移動中の通路も仕切られるなど一般の方と会う機会がなく、しっかり区分けされていた」と話した一方で、「自分はまだ疑いの状態。1部屋に2、3人入った場合は避難中に室内の感染者からもらってしまう可能性があるのでは、という不安がある」。会社員中西秀和さん(60)は「コロナか被曝かと言われたら、被曝の方が体に影響があると思う。コロナ対策も万全にしないといけないけど、発電所の非常事態なのでいかにスムーズに避難できるか、両立が難しいことを考えないといけない」と話していた。

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 敦賀市沓見の市総合運動公園体育館では、スクリーニング(放射線量検査)と簡易除染の訓練があり、県内の各健康福祉センターの職員や県診療放射線技師会のメンバーら約40人が参加した。

 公益財団法人・原子力安全研究協会(東京)の山本尚幸・放射線災害医療研究所長が講師となり、個人線量計やサーベイメーターの取り扱いについて、実物を動かしながら学んだ。

 防護服の着用、スクリーニングと簡易除染を体験。住民役と検査員役に分かれて、サーベイメーターで頭や顔、腕、足などの放射線量を調べた。

 感染が疑われる発熱した住民も想定し、仕切りで別のレーンを設置して検査する訓練も行った。二州健康福祉センターの坂川八千恵主任は「防護服の着脱や住民のスクリーニングの方法が理解できた。今後も訓練に参加していきたい」。