[PR]

 新型コロナウイルスの感染拡大により、子どもたちに食事と居場所を提供してきた「子ども食堂」が、休止を余儀なくされるなど影響を受けている。「3密」になりがちで、活動が難しいためだ。子ども食堂は何のためなのか。関係者らは原点に返り、新しい方式を模索している。

 午後5時、仕事帰りの母親(34)が自転車に娘を乗せ、明石市内の集合住宅1階にあるカフェに駆けつけた。子ども食堂「Mama’sキッチンnono」はここで開いている。無料の弁当を二つ受け取り、「ご飯を作る時間がなくて困っている。ありがたいです」と話した。

 食をきっかけにすべての子どもが地域の人とつながる居場所をめざし、週1回開いていたnonoには、毎回約30人が来ていた。しかし、3月の一斉休校後、開催を見合わせた。「こんな時こそ必要」「ステイホームと言われているのに開けるなんて」と、スタッフ間でも意見が分かれた。

 食堂を運営する「こどもサポート財団」事務局長の小谷くにこさん(49)は、活動を通じて様々な事情を抱える子どもたちをみてきた。「開けない選択肢はなかった」と、1人でnonoに常駐。「ひとり親で、給食もなくなり、子どもの昼食代がない」といった声に個別対応した。

 5月からスタッフの人数を限定しつつ、寄付や助成金を使って週1~2回、無料弁当のテイクアウトを始めた。インターネットなどで情報が広がり、約100件の問い合わせが殺到。父子家庭や孫をみている祖父母など、これまで食堂の存在を知らなかったという人からの切羽詰まった連絡があった。

 小谷さんは「コロナによって、支援が必要なのに私たちのネットワークでは出会えなかった人とつながれた。子ども食堂の役割を地域社会に見直してもらえたと思う」という。

 一方、nonoに通う高校1年の女子生徒(15)は子ども食堂の再開を待ち望む。「みんなでしゃべりながら食べる方が、気分転換になって楽しい」。3密だからこその居場所の再開は見通せず、葛藤が続く。

 西宮市で子ども食堂「みやっこ食堂」を運営するNPO法人「みやっこサポート」は、4月下旬から6月中旬まで平日の35日間で、計2361個の無料弁当を車で配達した。理事長の中島恵美さん(54)がSNSや知人らを通じて、昼食を必要としている小中学生のいる家庭に声をかけた。

 小学生3人のきょうだいが2歳の末っ子の面倒をみているという看護師の母親や、仕事を休めず子ども1人で留守番をさせている母親など、事情は様々だった。子ども食堂に取りにきてもらう方法だと近隣の子に限定されるため、配達方式にした。手渡し役は子どもに声掛けができるボランティアに頼んだ。「休校で不安になった子どもが、弁当を通じて笑顔になった。『あなたのことを思っている人がいる』という気持ちも運んだ」と中島さん。

 みやっこ食堂は2月末の開催を最後に休止。中島さんは家にこもることで虐待やDVなどを発見しづらくなり、子どもたちがつらい思いをするのではないかと考えた。「出来ることをやろう」と決心。弁当作りは業者に頼んだ。食材はコープこうべなどが提供、配達は金田運輸やダイハツ工業などが協力した。

 中島さんは「食堂の再開は見通せないが、NPOと企業、市民が力を合わせ、課題解決に向かうことができた。今後の活動の土台にしたい」と振り返る。

 伊丹市の「あかね食堂~わたしのおうち」は、子ども食堂に代わる支援として、市内2カ所で週3回、100円で子どもに昼食弁当を販売した。学校再開後は、寄付の米や野菜など食材配布に取り組んだ。代表の高塚伴子さんは「子ども食堂は子どもがほっこりできる居場所」と話し、時間と人数を限定して9月以降、3部制で再開する。(中塚久美子

     ◇

 〈子ども食堂〉 地域の大人が子どもに無料や低価格で食事を提供する民間の取り組み。家庭の事情などで孤立しがちな子に、食事と安心して過ごせる居場所を提供する拠点として注目されていたが、近年は、どんな親子でも参加できる地域交流の場としての役割が高まっている。

 担い手はボランティアや自治会など様々で、毎日開く所もあれば、週1回、月1回などの所も。寄付や助成金で運営される場合が多い。NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」(東京)の調査では、全国に3718カ所、兵庫県内は188カ所ある。すべての子どもがアクセスできる小学校の数を指標にした充足率では、兵庫県は24・6%。最も高いのは沖縄(60・5%)。

関連ニュース