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 ベルリンを拠点に世界中を旅してきた作家・詩人の多和田葉子氏は、コロナ禍で朗読会などがキャンセルになり、自宅で机に向かう日々を続けている。コロナ危機に際して、芸術支援を含めた政策を繰り出すドイツ政府と、なにかとちぐはぐな日本政府をどうみるか。社会や文化への影響は? 子どもが短命になる世界や祖国や母語をなくした人々を小説で描いてきた多和田氏に聞いた。

法より「人の目」が機能する日本

 ――ドイツ政府はコロナ危機への対策や支援を早く打ち出しました。

 「老人を支援し、医療を拡充し、零細企業、個人経営店、芸術家などを助けると表明、すぐに支援金も出ました。そこまではすごい。しかし、後で審査があって、必要なかった人は返金しないといけない、しかも返せなかったら罰せられる場合もあるそうです。大企業は法律対策をしていて大丈夫でしょうが、たとえば芸術が本当に守られたのかはまだ分かりません」

 ――不満も出てきていますか。

 「国内旅行は普通になっていますが、マスクの義務化に抵抗感を持つ人は多いです。罰金があるので無理してマスクをつけていますが。危険な圧力だという人もいますし、人権侵害だという人もいます。リベラルや左翼系はマスクを支持していますが、右翼系がマスクは国家権力による弾圧だと反発しています。隠れた不満が出てきて、社会のバランスが崩れる危機を感じてもいます」

 ――ドイツからは日本はどう見えますか。

 「日本は本当に不思議な国です。政府はなぜか何も対策を取っていないみたいで、逆に国民は社会全体のことを心配して自分でできることを進んでしている」

 「ドイツは個人の自由を大切にするので、自由を制限する時は法的に縛ります。地下鉄内でマスクをしていなければ罰金を払わなければいけない、などというのもそれですね。日本は法よりも『人の目』という見張りがあり、それが危険な面もあるし、機能しているという面もある。日本人が個人主義になったら、全く別の政治機構が必要になるでしょう。ドイツのように素早く議論して規則を決めるという仕組みは長い歴史と背景があってできることで、日本はすぐにはそうならないと思います」

朝日地球会議にも登壇
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 ――議論を経ないで感情や空気を優先するというのも、日本の特徴なのかもしれません。

 「福島第一原子力発電所の事故…

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