新型コロナウイルスの「第1波」から半年、感染しているかどうかを調べるPCR検査を車に乗ったまま受けることができる「ドライブスルー方式」は、いまでは多くの自治体が導入しています。しかし、厚生労働省は当初、「この方式を採用しない」と言い切り、普及に慎重な姿勢を示していました。ドライブスルー方式についての認識の誤りはすぐに認めましたが、その後1カ月あまり積極的に導入する姿勢を示さず、大量検査の態勢整備の遅れの一因になったとも指摘されています。厚労省はなぜ、初動で判断が遅れたのでしょうか。
拡大するドライブスルー方式での検体採取のデモンストレーション=5月、山形市
感染拡大が本格化し、1日当たりの感染者が30人、50人と2ケタに増えていった今年3月。医師がPCR検査が必要と判断しているのに、保健所が手いっぱいになり、検査を受けたくても受けられない「検査難民」が相次いで報告された。
そのころにわかに注目を集めたのが、韓国で普及が進むドライブスルー方式だった。車の中にいる人から白衣姿のスタッフが窓越しに検体を取る映像が新聞やテレビで盛んに報じられた。検査時間が短縮できるうえ、検査する側、される側双方の感染リスクを下げることにもつながるという。ドイツや米国などが相次いで導入することも伝わると、「日本でも早く導入すべきだ」との声が一気に高まった。
拡大する韓国・金浦空港近くの野外駐車場に設置されたドライブスルー方式のPCR検査施設=3月5日
ところが厚労省は3月15日、公式ツイッターに「『ドライブスルー方式』のPCR検査を実施しない理由について」と題したツイートを相次いで投稿した。「ドライブスルー方式のPCR検査が、いくつかの報道で紹介されています」としたうえで、「医師の診察を伴わないことが多いため、我が国では、実施しておりません」と指摘。「医師の診察が伴わない場合は、検査の陽性的中率が低下します」「感染している方が誤って陰性と判断されてしまうケースも一定程度発生し、感染を拡大させてしまう可能性があります」と続けた。導入への期待が高まっていたドライブスルー方式を採用しない、との表明だった。
このツイートに対し、疑問や反発の声が噴出した。とりわけやり玉に挙がったのが、厚労省が導入しない根拠に挙げた「医師の診察を伴わないことが多い」という点だった。「海外のドライブスルー方式でも検査前に医師が診断している」などと厚労省の認識の誤りを指摘するツイートが相次いだ。
厚労省は翌16日、公式ツイッターで海外のドライブスルー方式について「医師が検査の要否を判断しているものがある」と事実誤認を認め、前日の投稿を訂正した。
拡大するドライブスルー方式のツイートを訂正する厚生労働省の公式ツイッター
加藤勝信厚労相も国会でこのツイート内容を訂正するとともに、「感染防止がしっかり行われていれば、それをドライブスルーと言うかどうかは別として、いろいろなやり方があってしかるべきだ」と語った。
記事の後半部分では、ドライブスルー方式をめぐる厚労省の方針転換が遅れた理由を探ります。また、厚労省がツイッターで新型コロナ報道への反論を繰り返した裏にある幹部の「ひとこと」も取り上げます。
誤りを訂正したとはいえ、厚労…
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