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 米大統領選の民主党候補であるバイデン前副大統領(77)の妻ジルさん(69)は、教育学の博士号を持つベテラン英語教師だ。今回の大統領選ではキャリアを中断して選挙運動に力を入れ、バイデン氏の政治決断にも大きな影響力を持つ。8月18日の民主党全国大会ではオンラインで演説し、「ジョー(・バイデン氏)にこの国を任せてくれれば、皆をまとめ、よみがえらせてくれる」と語った。

 ジルさんは、かつて英語教師として勤めた地元デラウェア州の高校から中継で演説。がらんとした教室で「この静けさは重い。不安が廊下にこだましている」と、新型コロナウイルスの感染拡大によって、米国の多くの学校で授業が止まっていることを心配した。「母として祖母として、米国人として、地域を守ることに失敗し、かけがえのない命が奪われたことの大きさに心を痛めている」

 バイデン氏は上院議員当選直後の1972年末、最初の妻と長女を交通事故で亡くした。残された2人の息子を育てていた3年後、弟の勧めでジルさんとデートし、交際が始まった。

 ジルさんは教師になる勉強をしつつ、バイデン氏の2人の息子の食事の世話や学校への送り迎えをした。ある朝、バイデン氏が洗面所にいると息子たちがやってきて「ジルと結婚するべきだと思うんだ」と背中を押された。ジルさんは26歳。「母親を亡くした家族をどうやってよみがえらせればいいのか」とためらったが、バイデン氏の5回目のプロポーズで結婚に応じた。バイデン氏は自伝で「彼女は私の人生を取り戻してくれた」とつづる。

 演説で、ジルさんは「壊れた家族を癒やす方法は、国を癒やす方法と同じ。愛と理解、小さな思いやり、勇気、そして揺るがない信念だ」と話し、「パンデミックから回復し、次に備えるには皆をまとめられるリーダーシップが必要だ。それがジョーだ。彼は、あなたと同じように毎日一生懸命働き、この国をよくするだろう」と続けた。演説が終わると、バイデン氏が現れ、「彼女は最も強い人間だ。正しいことをしようと決めたら誰も止められない」と肩を抱いた。

 今回の大統領選でジルさんはキャリアを中断し、バイデン氏の選挙運動に力を入れる。予備選では積極的に有権者と交わり、連絡先を交換。コロナ危機で選挙運動がオンライン主体になってからも、自宅でバイデン氏に付き添いながら、支持者のリモート集会に顔を出す。副大統領候補の選考にも深く関わった。米メディアによると、候補者の調査や面接を担った4人の党重鎮に、バイデン氏が最終的にカマラ・ハリス上院議員(55)を選んだと電話で伝えたのもジルさんだ。

 バイデン氏が大統領になった場合、ジルさんは異色のファーストレディーになりそうだ。CBSテレビのインタビューには「ホワイトハウスに入っても教師は続ける。教師の価値や貢献を知ってもらい、職業としての地位を向上させたい」と答えた。(ワシントン=香取啓介)