登校再開「もろ刃の剣」 悩める欧米、保護者らの反発も

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ローマ=河原田慎一 ニューヨーク=鵜飼啓 パリ=疋田多揚 ロンドン=下司佳代子 ベルリン=野島淳
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 新型コロナウイルスの感染拡大が続く欧米で9月から学校の新年度が始まった。経済復興には学校再開は不可欠、というのが各政府の考えだ。だが、学校が新たな感染源になる懸念も強く、子どもの登校再開をめぐり揺れている。

 「子どもの社会性を育む上で、学校は重要な場所。再開させたいが、『感染者が出れば休校』なら一年中閉鎖になってしまうかもしれない」。3歳児から高校生まで約700人が通うローマの私立校「メリーマウント」のアンドレア・フォルツォーニ校長(56)は、悩みながら新年度の再開準備を進めている。隣の生徒と1メートル以上の間隔があくように、机の位置をテープで囲って床に表示。レベル別授業などで別の教室を使った時は、その都度消毒を徹底する、などの感染予防策を決めた。

 イタリア政府は、登校による学校再開にこだわってきた。アゾリーナ教育相は8月20日、地元メディアに「学校を再開させるのは国の義務であり、優先事項だ」と強調した。

 背景には、子どもを学校に預けないと保護者が働けず、経済の復興がままならない、という事情がある。感染者が世界最多の米国でも、トランプ大統領が経済回復のための学校再開を強く促した。だが、感染者の多い都市圏を中心に、オンライン授業を行う方針を決めた学区が増えている。

 イタリアでは、3月の都市封鎖後に一部の学校でオンライン授業を始めた。だが、パソコンなどの機器や通信回線が十分でなく、多くの子どもが満足な教育を受けられないまま6月に学年を終えた。ローマの公立高校のステファノ・サンカンディ校長(65)の元には、「9月からは子どもを学校に通わせたい」という保護者の要望が相次いだという。ただ、同国の新規感染者は8月下旬から増え始め、今は連日千人を超える。教員や生徒に感染者が出た場合に、学校を閉鎖する範囲や期間の明確な基準はない。サンカンディ校長は「対策は万全にするが、学校だけで責任は負えない」と語った。(ローマ=河原田慎一、ニューヨーク=鵜飼啓

仏「リスクゼロはない」、スペインは教員がスト検討

 欧米各国で学校の新年度が始まる時期を迎えても、新型コロナウイルスの猛威が収まらない。夏のバカンスの緩みなどから春のピーク並みに感染者が急増している国も多い。だが、各国政府は子どもの登校を前提とした学校再開の方針を崩しておらず、学校現場などからは不安の声が漏れる。

 フランスは9月1日から、幼稚園から小中高すべての公立校で新年度を始める。1日の感染者数は5月に200人以下まで下がったが、8月下旬に7千人を超えた。それでもマクロン大統領は「リスクゼロは存在しない」として、社会の活動を通常通り続ける考えだ。都市封鎖で傷んだ経済を立て直すには学校を閉じるわけにはいかないという事情もある。

 教員労組や保護者団体からは…

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