潰瘍性大腸炎で気づいた「あいまいさへの耐性」が持つ力

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アピタル編集長・岡崎明子
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 安倍晋三首相が持病の潰瘍(かいよう)性大腸炎の悪化により、辞任する。文学作品との出会いの場をつくる「文学紹介者」の頭木(かしらぎ)弘樹さん(55)も、大学3年生だった20歳のときに潰瘍性大腸炎を発症。下痢と出血と猛烈な腹痛を繰り返し、以来13年間、入退院を繰り返した。当事者である頭木さんの目に、いまの日本社会はどう映るのか。

かしらぎ・ひろき 1964年生まれ。8月に、「食事」と「排泄」という当たり前のことができなくなって気づいたことを、著書「食べることと出すこと」にまとめて出版。その他「絶望名人カフカの人生論」「絶望読書」「落語を聴いてみたけど面白くなかった人へ」など。NHK「ラジオ深夜便」の「絶望名言」のコーナーに出演中。

広がる病気への偏見

 安倍首相の辞任会見後、「潰瘍性大腸炎の悲惨さを語って欲しい」という趣旨の取材依頼がたくさん来ました。でも、すべて断りました。僕自身の反省もこめて言いますが、当事者は病気の大変な部分を語りがちです。伝える側も「なんともない」では記事にはならないので、結果として、病気の大変さばかりが世間に強調されます。

 人は知らないことについては、印象的な一例を知ると「こういうものだ」と一般化しがちです。でも、ものごとにはグラデーションがあります。過度な一般化は、病気に対する偏見につながるのです。

 潰瘍性大腸炎は、人によって症状に大きな違いがある病気です。重い人の例だけが一般化されると「そんな病気じゃ就職させられない」「結婚相手として許さない」といった差別が広がります。軽症で普通に日常生活が送れる人までもが、働けないと思われてしまうのです。実際、僕も安倍首相の1回目の辞任の後、安倍首相の例をあげられ「途中で仕事ができなくなるかもしれないような人に、大事な仕事は任せられない」と、もらえるはずだった大きな仕事を失いました。僕だけでなく、非常に多くの同病者が当時、仕事や結婚に差し障りが出たと思っています。

 今回の辞任でも偏見につながるような記述を見かけますが、前回に比べると、病気を揶揄(やゆ)するような言論は減った気がします。それは、多くの人が、新型コロナウイルスへの感染におびえている現状が影響しているのかもしれません。

 大多数の人はこれまで、自分…

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アピタル編集長・岡崎明子
アピタル編集長・岡崎明子(おかざき・あきこ)
科学医療部記者。広島支局をふり出しに、科学医療部で長く勤務。おもに医療、医学分野を担当し、生殖医療、がんなどを取材。特別報道部時代は、加計学園獣医学部新設問題の取材で日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞を受賞。オピニオン編集部デスクを経て、2020年4月からアピタル編集長。