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 「今年は最低賃金を引き上げない」。そう結論づけた7都道府県の一つ、東京の最低賃金審議会には、再考を求める「異議」の申し立てが前年の5倍以上も寄せられました。「貧困で苦しい」「新型コロナウイルス下で低賃金で働く人に報いて」などの切実な声が殺到したのです。異議を受けた審議会は、こうした声にどう向き合い、どんな結論を出したのでしょうか。

拡大する写真・図版今年の最低賃金の引き上げを見送った東京地方最低賃金審議会。前年の5倍以上の66件の異議が申し立てられた=2020年8月21日午前、東京都千代田区、榊原謙撮影

「少し高いお肉なんて」

 「うつ病の原因になった長時間労働は、最低賃金が今より高かったら、しなくてすんだことです。どうか最低賃金引き上げ凍結を撤回してください」(50代、非正規労働者)

 「昼間は不動産屋で働いていますが最低賃金です。消費税も上がり、家計が圧迫されているのに、見合った給料がもらえません」(40代、ダブルワーカー)

 「保育士は国家資格なのに、子どもたちの命を守っているというのに、(賃金が)低いです。最低賃金で働かされている人たちが、どれだけいるでしょうか。貧困で苦しい人がほとんどだと思います」(20代、非正規保育士)

 「私は両親のように家を建てたり車を買ったり、休日に少し高いお肉を買ったりなんてことは、一生できないのだろうなと思っています」(20代、非正規労働者)

 最低賃金の大幅引き上げを訴える市民団体「エキタス」には8月、こうした切実な声が170人から届いた。労働者側と使用者側の委員、そして大学教授ら中立の公益委員でつくる「東京地方最低賃金審議会」が8月5日、新型コロナ禍で企業経営が打撃を受けていることなどを背景に、今年は東京の最低賃金は引き上げずに据え置くよう、東京労働局長に答申したからだ。

 エキタスは同19日、集まった意見を東京労働局に提出。「最低賃金の引き上げ凍結は、労働者の生活のリアルを無視している」と、審議のやり直しを求める「異議」を申し立てた。

拡大する写真・図版東京労働局の担当者に、答申への異議を申し立てる市民団体エキタスのメンバーたち(奥)=2020年8月19日、東京都千代田区、佐藤英彬撮影

 東京労働局によると、今年の審議会の答申に対する異議申し立ては66件。前年の12件を大きく上回った。一般市民やエキタスなどの団体に加え、医療や建設、交通、銀行など、新型コロナ禍のなかでも出勤せざるを得ない「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる働き手の労働組合からも申し立てが相次いだ。

 苦しい生活の働き手に少しでも報いるべきだとの意見に加え、コロナ禍でも大幅に最低賃金を上げている国があるとの指摘や、最低賃金の引き上げは個人消費の下支えになり、経済にプラスに働くと説くものもあった。

労働側の委員「一日たりとも忘れずに」

 答申に対する異議の申し立てを受けて、8月21日に開かれた審議会。冒頭、事務局を務める東京労働局の職員が約45分にわたり、寄せられた異議の趣旨や代表的な声などを読み上げた。その上で、会長の都留康・一橋大名誉教授が、委員に意見を尋ねた。

 求めてきた「据え置き」が答申…

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