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 8月末時点で8試合に登板し、防御率は1・69。ドラフト3位のルーキー、伊勢大夢の成績は救援投手として申し分ない。開幕1軍メンバーに抜擢(ばってき)した首脳陣の期待に応えていると言っていいだろう。

 しかし本人の表情はさほど晴れやかではない。

 「(自分らしい投球ができた登板は)1軍ではまだありません。毎試合、いい意味で課題が出てくれている」

 最大の課題は、決め球になる変化球がないことだ。持ち味の強い直球で押し込めても、打者を追い込んだところで行き詰まる。

 スライダーかフォークをウィニングショットに定めたいと考え、7月16日からファームに場を移し研鑽(けんさん)に励んだが、道半ば。1軍再昇格直後の8月23日、オープナーとして先発を託された中日戦が「象徴的だった」と伊勢は言う。

 「2イニング無失点。結果を見れば役割を果たせたのかなと思うけど、追い込んでからフォアボールを出したりヒットを打たれたり。球数も増えてしまった。変化球さえあれば、という試合でした」

 未完成といえど、1軍に身を置くことのメリットは大きい。何より、一線で活躍する先輩投手たちを間近で見られる。なかでも伊勢に勇気を与えているのが三嶋一輝だ。

 「最初はランナーがいる状況とかで投げていたけど、いまは守護神。結果を残せばチャンスが巡ってくるということを見せてもらいました」

 7月15日の中日戦。六回、先発の浜口遥大が1死一、二塁とピンチを迎えたところで降板した。ここでマウンドに送り出された三嶋は、併殺で危機を脱した。

 試合後、伊勢は投手コーチの木塚敦志からこう言われたという。

 「お前もこういうピッチャーになれよ」

 その言葉は、翌日からファームでの調整に入ることになっていた22歳の心に深く刻まれた。

 明治大の同期で、広島からドラフト1位指名を受けた森下暢仁の活躍も刺激材料だ。森下は勝ち星を積み上げ、防御率でもリーグ上位に名を連ねる。伊勢が明かす。

 「オープン戦で打たれていたときは、LINEで『プロはすごい』と言ってたんですけどね。もうプロの世界に対応しているのは、さすが森下って感じです。大学時代から雲の上の存在。少しでも追いつきたいし、負けたくないって気持ちは大いにあります」

 ここまでの登板機会は、ビハインドの場面か、点差に余裕のある勝ちゲームが中心。だからこそ、あのオープナーとして立ったマウンドは格別だった。リーグを代表する左腕、大野雄大との投げ合い。試合前から「ワクワクしていた」。

 勝負を決する重要な場面を託される存在に――。そのために必要な信頼を、いまはコツコツと積み重ねていく。

 「まずは任された仕事を全力でまっとうするだけ。そのなかでランナーをできるだけ出さないように、そして試合の流れを崩さないように、空気を読んだピッチングをしていきたい」

 目指すべき場所へ。追いかける背中へ。大きな夢をかなえるべく、奮闘は続く。(横浜DeNAベイスターズ公認ライター・日比野恭三)