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 新型コロナウイルスの影響で、飛驒牛(岐阜)や松阪牛(三重)といった東海地方のブランド和牛が苦境に立たされている。外出自粛などで外食需要が大幅に落ち込み、飛驒牛の枝肉価格は一時、通常より3割以上も下落。需要を支えていたインバウンド(訪日外国人客)の回復も当面は難しく、行政や生産農家が試行錯誤を続けている。

 「最初は海外や大都市だけのひとごとだと思っていた。コロナの恐ろしさを思い知った」。6月下旬、岐阜県高山市で約160頭の肉牛を飼育する「辻畜産」代表の辻直司さん(58)は振り返った。

 県産和牛が「飛驒牛」として銘柄化された1988年以降、飼育頭数を徐々に増やした。インバウンド需要の恩恵も受け、2000年代には現在の頭数を飼育するまでになった。

 コロナ禍以前は、飛驒牛の最高等級「A5」の平均枝肉価格は、1キロあたり3500円前後。しかし、中国や韓国、米国などが入国制限の対象になった3月には1キロあたり3千円を割り込み、国の緊急事態宣言が出た4月には2千円台前半まで落ち込んだ。

 辻さんによると、子牛の購入費やえさ代など飛驒牛1頭の「原価」は約130万円という。4月には、出荷時の価格が1頭100万円前後まで落ち込んだ。「えさ代にもならないくらいだった」。価格が「原価」を下回ったのは「BSE(牛海綿状脳症)問題の時以来」だったという。

 飛驒牛の出荷時期は月齢30カ月前後。エサの種類や量を調整し、肉質のピークを出荷時期に合わせる。相場の回復を待つ「出荷調整」が行われることも覚悟したが、時期を過ぎると、牛の病気や突然死のリスクが高まる。「販売金額が下がっても、えさ代などの支出は変わらない。えさの質を下げて肉質が落ちても、導入頭数を減らして2年後に売るものがなくなっても困る」と、辻さんは話す。

 岐阜県は5月18日から7月30日まで、県内2市場であった20回の競りで、購買補助(飛驒牛購入の事業者に1頭あたり最大10万円の補助)を行い、市場価格を下支えした。5月以降は、飲食店の需要などが一部回復し、家庭内での消費も増え、平均枝肉価格は上昇に転じた。6月は枝肉価格が1キロ3千円台に回復。肉用牛の販売をめぐっては、販売額が生産費を下回った場合に、赤字額の9割を国費と生産者の積立金で補塡(ほてん)する肉用牛肥育経営安定交付金制度(牛マルキン)があるが、岐阜県は全国で唯一、制度が発動されなかった(6月販売分)。

 ただ、インバウンド需要の回復は見込めず、今後の見通しは不透明なままだ。県畜産振興課の担当者は市場価格の回復は一時的とみる。「今まではインバウンド消費に頼っていた部分がある。今後は国内消費を拡大する施策をとっていかないと続かないが、どうPRをしていくのか、具体的な方策はまだ決まっていない」と話す。

 三重県の「松阪牛」も、感染拡大のあおりで市場価格が大きく下落している。「A5」と「B5」の枝肉価格の平均は、東京市場の取引価格で通常3千円台半ばだが、昨年12月に3800円台のピークを迎えたのを最後に、4~5月は2600円台に下落し、回復の兆しは見られない。

 同県松阪市農水振興課の担当者は「外出自粛での影響で流通が止まっても、農家は飼育を続けているので出荷を止めることはできない」と話す。

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