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 まれにみる勢力で沖縄から九州に近づく台風10号。暴風や大雨、高潮のいずれも記録的な被害をもたらすおそれがある。住民らは各地で備えを急ぎ、関係者は最大級の警戒を呼びかけた。

 鹿児島県の奄美地方は6日に台風10号の暴風域に入ると予想され、住宅が倒壊する恐れがあるほどの猛烈な風が吹くとみられる。

 奄美市の小元忠広さん(79)は5日、避難所となった小学校に妻と2人で身を寄せた。奄美大島に台風が近づくのは珍しくないが、避難するのは初めて。「今回は家にいても怖い。ただただ、過ぎるのを待つだけ」

 同市の名瀬港そばに立つ奄美ポートタワーホテル。台風接近前の客室稼働率は3割弱だったが、5~6日は自主避難する島民らで満室に。部屋などの窓にはテープを貼って暴風に備えているが、10階の展望レストランはガラス張り。不安を感じる客には、部屋に食事を運ぶことにしている。

 代表取締役の川田光弘さん(68)は「避難所の役割を果たせるよう責任を感じる」と緊張感をにじませた。

 東シナ海に面した枕崎市の漁港には、ロープで係留された漁船が並んだ。同市の有村和義さん(79)も釣り船を陸に引きあげ、ロープで港に固定。強風と高潮による大きな被害が出た1951年の「ルース台風」で、何隻もの船が道路に打ち上げられた光景を思い出すという。「これまでにない大きな台風と聞いているので不安」と語った。

 5日午後5時半現在、鹿児島県内の一部自治体では避難指示や避難勧告が出ている。十島村(約670人)と三島村(約380人)からは4~5日、県の災害派遣要請を受けた自衛隊ヘリや定期船で計約370人が島外に避難したという。

 7月の記録的豪雨で被害を受けた地域でも、住民らが対応を急いだ。多くの家屋が全半壊した熊本県人吉市では仮置きされている災害廃棄物が台風で飛ばないようネットがかけられた。

 長崎市の山間部にある野中隆史さん(36)のミカン園では豪雨でビニールハウス裏手の土砂が崩れた。5年ほどかけて実をつけるようになった木も数本流された。

 台風10号による被害を少しでも食い止めようと、点在するハウスのビニールを巻き上げて備えた。「なんとか持ちこたえてほしい。頼む頼むと、祈ることしかできません」

 大分県日田市の天ケ瀬温泉街では5日、豪雨で氾濫(はんらん)した玖珠川にたまった土砂や岩の撤去作業が行われていた。阿部信明さん(60)の旅館ではボランティアが割れた窓や扉にベニヤ板を張ってくれたという。「被害が出ないことだけを願っている」と語った。

 気象庁は宮崎県の多いところで700~1千ミリの雨が降ると見込む。宮崎市中心部を流れる大淀川の氾濫を警戒し、5日夕までに排水ポンプ車を支流の4カ所に設置。大淀川水系ではダムの事前放流も実施。河川脇にある電光掲示板に「放流中」の文字が点灯した。

大東島地方が暴風域に

 沖縄県の大東島地方は5日、台風10号の暴風域に入った。沖縄電力によると、北大東村と南大東村で午後9時現在、計720戸が停電した。

 台風10号の接近を受け、北大東村の宿泊施設「ハマユウ荘 うふあがり島」では安い値段で部屋を貸し、避難する住民らを受け入れている。5日の宿泊者42人のうち32人が避難してきた住民ら。ガラス窓をベニヤ板で覆い、宿泊客には外に出ないよう指示している。

 社長の親川茂治さん(57)によると、この日の夕食は弁当を用意。ただ、8月下旬を最後に船が来ていないこともあり、今後、備蓄している食料で足りるのか不安があるという。

 親川さんは5日夕、「雨風がひどくなりそうで不安。今は息をひそめて、無事に台風が通り過ぎるのを待つだけ」と話した。