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 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、子どもを取り巻く本の環境が変化している。子ども向け本の販売が伸びた一方で、本に触れる場は制限されている。ウィズコロナ時代にも、本を通じた交流の場を残そうと奔走する県内の動きを探った。

 今年2月、掛川市掛川に書店がオープンした。高木久直さん(49)が22年間勤めた静岡市の大型書店を辞めて開いた高久書店だ。

 8月下旬、高木さんは、常連客の深津修也君(高1)に声を掛けた。「来月県内の城にまつわる短編集が出るんだよ。ぜひ読んでみて」。深津君は大の歴史好き。この日も第二次世界大戦をテーマにした新書を購入した。「これまで本屋に行くことはなかったけれど、気軽に立ち寄れる場所だから通うようになった」

 1927年築の古民家を改築した店の2階は自習室として開放している。「本屋を地域のたまり場にしたかった」と考えたが、開店後すぐに感染拡大が深刻に。来られない人のために、自宅まで本を宅配するサービスをはじめた。

 このほか、まだ書店員だった2016年から、本屋のない地域に本を積んで車で赴く「走る本屋さん」の活動も続ける。「コロナ禍で遠出できない中でも、本を読みたいという潜在的な需要は確実にある。手が届くところに本屋があることが大切」と力を込める。

 「年齢にあった本を読むことで人生が豊かになる」と話すのは焼津市大住で家庭文庫「もりのいえ」を営む今村愛子さん(62)。14年勤めた学校司書を辞め、一昨年、自宅を改築して児童書や絵本を並べて、家庭文庫を開いた。

 感染拡大の影響で子どもを連れてこなくなった親もいたが、今でも週に1回の開館に合わせて、地域の子どもたち約20人が通う。今村さんは「環境ってとても大切。身近に本がある子は本が好きになる」と話す。感染が拡大した3月~5月は文庫を休み、その子にあった本を選んで、まとめて貸し出す方式をとった。「自分では選ばない本だけど面白かった」と好評だったという。今村さん自身も「ひとり一人、読む姿を想像しながら本を選ぶのが楽しかった」。

 全国出版協会・出版科学研究所(東京)によると、自粛や休校の影響で、今年上半期の推定販売金額は前年同期比で2・6%増の7945億円。その中でも子ども向け書籍の伸び率は高く、児童書で約4%増、ドリルや参考書では約20%増だった。

 コロナ禍で本への需要が高まる一方で、書店数の減少は歯止めがかからず、図書館も一部施設の利用を制限するなど読書の機会は失われている。

 県立中央図書館は閲覧室のいすを撤去し、学習コーナーを閉鎖。イベントを中止し、長時間の滞在を避けるよう呼びかけている。子どもの読書推進を支援する「子ども図書研究室」が行う講演会や交流会の開催も困難に。6月から、職員が選んだ新刊を紹介する動画配信をはじめた。殿岡容子副館長は「子どもたちには図書館を居場所としてゆっくり過ごしてもらいたいが、感染対策を考えざるを得ず、歯がゆい。これまでと違った形でも、交流の場を残すサービスを模索していく」と話している。(広瀬萌恵)