パイプライン事業に暗雲 ロシア毒殺未遂で揺れるドイツ

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ベルリン=野島淳 モスクワ=喜田尚
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 ロシアの反政権活動家アレクセイ・ナバリヌイ氏の毒殺未遂事件で、欧州とロシアの溝が深まっている。ロシア政府に疑惑の目が向けられるなか、毒物を特定したドイツでは、両国をつなぐ天然ガスパイプライン事業を中止すべきだとの声が与野党から出始めた。事業を推進してきたメルケル政権は経済的利益との間で難しい立場だが、計画の見直しの可能性も出てた。

 ナバリヌイ氏は先月、ロシア国内で意識不明となり、ベルリンの病院に転院。ドイツ政府は2日に、旧ソ連で開発されたとされる兵器級の神経剤「ノビチョク」系の毒物が使われたと断定した。メルケル首相は事件は「私たちがよって立つ基本的な価値と権利に向けられたものだ」と非難し、欧州連合(EU)などと協力して対処する方針を示した。欧州各国からもロシアに厳しい発言が相次いだ。

 ただ、現状ではロシアを追い詰める効果的な手立ては少ない。そこでドイツの与野党から出てきたのが、天然ガスパイプライン事業「ノルドストリーム2」(NS2)の中止論だ。ロシアとドイツを海底パイプラインで結んでガス輸送量を倍増させる計画で、すでに工事の9割が完成。欧州へのエネルギー輸出で米国と競うロシアにとって、今後の経済の死活を握るとされる。中止によって受ける打撃は大きい。

 ドイツ連邦議会のレットゲン…

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