田中陽子 畑山敦子
拡大する酒井ひとみさん(中央)と夫(左隣)ら家族とヘルパーたち=2017年、酒井さん提供
難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性に頼まれて殺害したとして医師ら2人が起訴された事件は、私たちに重い問いを投げかけました。苦しみを抱える人が、死ではなく「生きる」を選べる社会にするにはどうすればよいのか。難病の人たちの生き方と、それを支えるものを取材しました。
事件のことはニュースを見た娘(19)が教えてくれた。「ママ、死なないでね」と言われ、「うん」と答えた。
東京都の酒井ひとみさん(41)は2010年にALSと確定診断されたとき、涙をぬぐえなかった。すでに顔の表情と指先しか動かせなくなっていた。生きる意思を支えたのは家族だ。「勝手な考えかもしれませんが」と前置きし、こう振り返る。「自分がいないと、まだ幼かった娘や息子が生きていけるか心配だった」
拡大する酒井ひとみさん(左)と長女=2019年、酒井さん提供
一方で、夫(40)に別れを切り出した。介護の負担をかけるのが申し訳なかったから。夫は「できる限りサポートする」と言ってくれた。
自分が生きることで家族の自由を奪ってしまう。振り切れぬ迷いを抱えつつ、そうさせないために10年間、行政と闘い続けた。
公的サービス「重度訪問介護」の利用を申請したが、当初は1日約3時間、12年に気管切開により呼吸器をつけても13時間しか認められなかった。障害者総合支援法の6段階の支援区分のうち、ALSなどの難病や脳性まひなど重い方の3区分の人が受けられるが、時間は自治体が決める。夫と、片道2時間かけて自宅に来てくれる母はどんどん疲弊した。
「このままでは家族も私も生き…
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朝日新聞社会部