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 滋賀県守山市の子どもや若者の支援団体「Atlas(アトラス)」が、来春から使われる育鵬社版の中学の公民教科書にメンバーらの写真を無断で掲載されたとして、7日付で同社に抗議文を送ったと発表した。

 8日に大津市内で会見した代理人の土井裕明弁護士とAtlas代表の日野貴博さん(30)によると、写真は157ページのコラム「『子どもの貧困』と『子ども食堂』」に掲載された。同団体が2012年に小・中学生向けに開いた無料の学習塾を撮影したもので、大学生のボランティアらが写っている。

 学習塾は「滋賀県守山市」で開かれたのに、教科書では「愛知県守山市」と実在しない地名になっていた。この間違いがインターネット上で話題になり、日野さんが写真の掲載に気づいたという。

 朝日新聞の記者が学習塾を取材し、写真は12年5月に朝日新聞に掲載された。育鵬社は朝日新聞社が運営する写真などのデータベース「朝日新聞フォトアーカイブ」から購入した。アーカイブの利用規約には、朝日新聞は被写体となった人物の肖像権は有しておらず、「二次的な利用の許可、許諾はユーザーの責任と費用で行うもの」と明記されている。

 土井弁護士は「教科書への掲載は明らかな二次的利用。育鵬社の責任で団体側へ事前連絡すべきだったし、コラムの内容も団体の活動趣旨と異なっている」と批判した。日野さんは「権利や人権を教える公民の教科書でこんな権利侵害をされるなんて。見過ごせないと思って抗議と会見に踏み切った」と話す。

 朝日新聞の取材に対し、育鵬社は「肖像権の問題は把握している。適切に対応したい」とコメントした。

 育鵬社版の教科書は、歴史認識や憲法観などをめぐって議論がある。県教委によると、県内では育鵬社の公民教科書を採択している公立中学校はない。文部科学省によると、2020年度の採択率は全国で5・8%。来春からは、大阪市、横浜市などは他社版へ切り替え、大阪府泉佐野市や栃木県大田原市、千葉県と埼玉県の県立中学などは採択することを決めている。(新谷千布美)