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 戦後初めて春夏の甲子園大会が中止された2020年。それでも夏に甲子園交流試合と独自大会が開催され、球児たちは例年以上に「喜び」「感謝」の言葉を口にした。改めて痛感したのは健康の大切さであり、学業あっての部活動という、ごく当たり前の事実だ。

 「学生野球の父」と呼ばれる飛田穂洲(すいしゅう)が、終戦の翌1946年夏の復活大会を総括した文章がある。4年間の中断のあと再スタートしたことを喜びつつも、単に強いチームを目指したり、周囲がお祭り騒ぎしたりする風潮を戒め、「学生野球は学校教育の一部として厳(げん)たる存在でなくてはならぬ。グラウンドは清浄なる広き教室であるとともに徳育の道場でなければならぬ」と説いた。

 コロナ禍の今夏、勝ち負け以前に野球ができる喜びを感じていた球児も多かった。限られた時間の中で、みんなで工夫し、励まし合い、チームを作っていくという得がたい経験もした。

 それは、高校野球が忘れかけていた大切なものではないだろうか。

 運営側も例年はできない配慮をした。日程を緩和したり、登録人数を増やしたり、試合ごとに入れ替えられるようにしたりした。

 来年の春夏の甲子園大会日程が発表された。すべてコロナ禍前に戻せるはずもないし、戻す必要もない。大会の運営方法、日々の部活動のあり方。2020年の経験を、新しい時代に生かしたい。(編集委員・安藤嘉浩