走って走って、間一髪で生きのびた。あの日、人生が、世界が変わった。いのちの重さとはかなさを知った。だが――。19年前、米同時多発テロで米ニューヨークの世界貿易センター(WTC)が崩落した直後をとらえた有名な写真に写る男性が3月、新型コロナウイルスで亡くなった。パートナーは寂しさをぬぐえないまま、9月11日の朝を迎える。
2001年9月11日、ニューヨークにそびえたWTCのツインタワーに2機の飛行機が突っ込み、南棟、北棟と順番に崩壊した。快晴の空の下、ビルからあがる灰色の煙、必死に逃げる市民。そんな一瞬をとらえたAP通信の写真は、全世界に配信された。
撮影したスザンヌ・プランケットさん(50)によると、午前9時59分、南棟が崩壊した時間に撮った。「14枚だけシャッターを押して逃げた」という。
撮影位置は現場から東にわずか300メートル。「(切り落とされた)木のように倒れたら、とても助からない。そう思うと怖かった。まるで昨日のように、はっきりと心に残っている」
写真には、電気技師だったスティーブン・クーパーさんが写っている。当時60歳。黒いシャツを着て、知人に届けるはずだった黄色の封筒を左脇に抱え、顔をこわばらせて走っている。
クーパーさんはこの日の朝…

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