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 9年半前の大津波で、市街地が壊滅した岩手県陸前高田市。まもなく開館1年を迎える「東日本大震災津波伝承館」では、訪れた人たちが未曽有の災害と向き合い、次への備えを再確認していく。時の流れとともに震災の記憶が薄らいでいくなか、風化にあらがおうとしている。

 短い夏休みが終わった8月下旬から、小中学生の団体客が増え始めた。「自然災害の怖さを感じた」。山形から修学旅行で訪れた尾形虹歩(にしほ)さん(14)は、津波で屋根がひしゃげた消防車に見入っていた。「家のそばに海はないけれど、豪雨や土砂災害に備えたい」

 新型コロナウイルスの影響で新年度は学校関係の見学はほとんどなかったが、2学期が始まると、県内からの震災学習や近隣の修学旅行生が増加。8月18日現在で、9~12月の予約は小学校から大学まで85件に上り、初年度の47件を大幅に上回る。

年間20万人 「買い物ついでにふらっと」も

 昨年9月22日に開館した伝承館は8月27日に入館者が20万人を突破した。隣に道の駅があるため「買い物ついでにふらっと入ってくる人も多い」と解説員の吉田彰さん(42)は話す。入場料が無料とあって、さっと見て出ていく人も多いが、「今度ゆっくり見に来るよ」と声をかけてくれる人もいる。「間口の広さを生かして、震災を知るきっかけを増やしたい」と吉田さん。

 解説員の1人、人首(ひとかべ)ますよさん(55)も震災学習で訪れた中学生たちに説明をしていた。自分の末っ子は震災時、この子たちと同じ中学生。津波で全壊した気仙中にいたが、避難して無事だった。

 流された自宅は海のそばにあったのに、息子にちゃんと津波の怖さを伝えられていただろうか――。後悔がある分、どうすればちゃんと伝えることができるかを考え続けている。「大事なのは自分の命を守ること。伝承館を訪れたことが、家族で話し合うきっかけになったら」

 多くの犠牲者が出た陸前高田でも、復興イベントが減り、ボランティアも去るなかで、災害の痕跡も消えつつある。伝承館を運営する県は、沿岸の被災地に足を運ぶ拠点となる「ゲートウェー」と位置づける。震災から10年を前に、来場者に初のアンケートを行い、目的や満足度、ほかに訪れたい伝承施設などを調査する。熊谷正則副館長は「風化が懸念される震災10年後にも、多くの人が訪れる取り組みを進めたい」と話す。

他の施設では利用低調 「単独では限界」

 震災の記憶や教訓をどう伝えていくか――。各地の施設も試行錯誤している。

 津波被害を受けた岩手県宮古市…

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