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 アラジン、アリババ、シンドバード――。幻想とエキゾチシズムが入り交じるアラビアンナイトの世界に、胸を躍らせた人は多いだろう。「千一夜(千夜一夜)物語」と呼ばれる中東の古典文学だ。この物語集には翻訳者によって各種の版が存在する。そのひとつ、ガラン版が刊行された。『ガラン版 千一夜物語』(全6巻、岩波書店)の訳者、西尾哲夫・国立民族学博物館教授に意義を聞いた。

 アラビアンナイトは、妻の裏切りで女性不信に陥ったシャフリヤール王に、才気あふれる宰相の娘シェヘラザードが摩訶(まか)不思議なお話を夜な夜な語り継ぐ物語集だ。いくつもの冒険譚(たん)や恋愛話を収め、魔法のランプや空飛ぶ絨毯(じゅうたん)のエピソードを知らない人はほとんどいないはず。西尾さんはそれを「庶民の文学と知識層の高尚な文学をつなぐ存在」と位置づける。

 原形は9世紀ごろのバグダッドで成立し、近世のカイロでほぼ現在の形になったとされる。いくつもの伝承が入れ替わりながら次第にまとめられていった集合体だから、その成り立ちは複雑で謎も多い。実は、アラジンもアリババと盗賊たちも、シンドバード航海記さえも当初から収録されていたか確認できないという。異伝も多く、偽の写本も出回った。

 一方、はるか東洋へのあこがれは当時のヨーロッパ人の好奇心をかき立てたようで、さかんに翻訳されていくつもの版を生んだ。民族誌研究に有用なレイン版、お色気たっぷりのバートン版、日本でも浸透した華麗なマルドリュス版。フランスの東洋学者アントワーヌ・ガランの手になる18世紀初頭のガラン版もそのひとつだ。「千一夜」の名もこれに由来する。

 ガラン本人が述べているように、ガラン版は必ずしも原典に「忠実」というわけではない。「礼儀上許されない」こと、つまり下品で低俗な部分は意図的に省かれたり書き換えたりされている。だが、この“品行方正”さが、アラビアンナイトを誰もが親しめる世界文学に飛躍させた。

 そもそもこれらの物語は、地元…

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