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 安倍晋三首相は11日、「ミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針」についての談話を発表した。敵のミサイル基地などを直接攻撃する「敵基地攻撃能力」を保有すべきだとの主張をにじませつつも、「今年末までにあるべき方策を示す」と記し、新たな政権に判断を委ねた。

 首相は談話を出した後、記者団に「退任にあたり、今までの議論を整理した。次の内閣でもしっかり議論していただきたい」と語り、退陣前に一定の道筋をつけたとの考えを示した。

 談話は北朝鮮のミサイル能力の向上を具体的に説明し、「ミサイル防衛網を突破することを企図していると指摘されている」と強調。配備を断念した陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替策として、弾道ミサイルの脅威から日本を守る迎撃能力を確保するとした。

 そのうえで「迎撃能力を向上させるだけで本当に国民の命と平和な暮らしを守り抜くことが出来るのか」と、従来のミサイル防衛体制だけで十分か疑問を投げかけた。そうした問題意識のもと、ミサイル阻止の新方針を検討してきたとして、敵基地攻撃能力の保有を念頭に「抑止力を高め、我が国への攻撃の可能性を一層低下させていくことが必要ではないか」と訴えた。

 新方針の検討は憲法の範囲内で行い、「専守防衛の考え方」や「日米の基本的な役割分担」を変えることはないとも明記。陸上イージスの代替策とあわせて、与党と協議し、年末までに方策を示すと記した。

 政府は、安倍政権がめざしていた国家安全保障戦略(NSS)の初改定について来年以降に先送りする方針。防衛計画の大綱(防衛大綱)、中期防衛力整備計画(中期防)は、予定通り年末に改定する方向だ。(相原亮、寺本大蔵)

安倍首相の談話(全文)

 1.私が内閣総理大臣の任に就いて7年8カ月、我が国の安全保障政策に大きな進展がありました。平和安全法制を成立させ、日米同盟はより強固なものとなりました。我が国自身の防衛力向上と、日米同盟の強化、更には「自由で開かれたインド太平洋」の考え方に基づき諸外国との協力関係を構築することにより、我が国周辺の環境をより平和なものとすべく努力してまいりました。

 2.我が国を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しています。特に、北朝鮮は我が国を射程に収める弾道ミサイルを数百発保有しています。核兵器の小型化・弾頭化も実現しており、これらを弾道ミサイルに搭載して、我が国を攻撃する能力を既に保有しているとみられています。また、昨年発射された新型の短距離弾道ミサイルは、ミサイル防衛網を突破することを企図していると指摘されており、このような高度化された技術がより射程の長いミサイルに応用されることも懸念されています。

 3.このような厳しい状況を踏まえ、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために、何をなすべきか。やるべきことをしっかりやっていく必要があります。まず、イージス・アショアの配備プロセスの停止については、その経緯を確認し、既に公表したところです。その上で、その代替として取り得る方策については、検討を進めているところであり、弾道ミサイル等の脅威から、我が国を防衛しうる迎撃能力を確保していくこととしています。

 4.しかしながら、迎撃能力を向上させるだけで本当に国民の命と平和な暮らしを守り抜くことが出来るのか。そういった問題意識の下、抑止力を強化するため、ミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針を検討してまいりました。もとより、この検討は、憲法の範囲内において、国際法を順守しつつ、行われているものであり、専守防衛の考え方については、いささかの変更もありません。また、日米の基本的な役割分担を変えることもありません。助け合うことのできる同盟はその絆を強くする。これによって、抑止力を高め、我が国への弾道ミサイル等による攻撃の可能性を一層低下させていくことが必要ではないでしょうか。

 5.これらについて、与党ともしっかり協議させていただきながら、今年末までに、あるべき方策を示し、我が国を取り巻く厳しい安全保障環境に対応していくことといたします。

 6.我が国政府の最も重大な責務は、我が国の平和と安全を維持し、その存立を全うするとともに、国民の生命・身体・財産、そして、領土・領海・領空を守り抜くことです。これは、我が国が独立国家として第一義的に果たすべき責任であり、我が国の防衛力は、これを最終的に担保するものであり、平和国家である我が国の揺るぎない意思と能力を明確に示すものです。そして、我が国の繁栄の不可欠の前提である、我が国の平和と安全が維持されるよう、今後とも、政府として取り組んでいかなければなりません。