安倍晋三首相が、敵のミサイル基地などを直接攻撃する「敵基地攻撃能力」を保有する必要性をにじませつつも、次の首相に判断を委ねる内容の談話を発表した。退陣を目前に控え、異例の談話を出した背景に何があったのか。
首相は11日夕、記者団の取材に応じて「(次の内閣の判断を)縛ることにはなりません」と強調した。一方で「次の内閣でもこの議論を深めていくのは当然だろう」とも語り、談話の継承に期待感を示した。
「安全保障戦略のありようについて、新しい方向性を打ち出す」。首相が突如表明したのは6月18日の記者会見だった。敵基地攻撃能力についても「当然議論していく」と述べた。
その5日前に受けた人間ドックの結果、首相は持病の潰瘍(かいよう)性大腸炎について「再発の兆候」を指摘された。早期退陣の可能性に直面した首相が、最後に持論である打撃力の保有へかじを切ろうとした――。政権幹部はそう解説する。
折しも河野太郎防衛相が陸上…