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 新型コロナウイルスの流行が最初のピークを迎えていたとされる4月、あるカードが「命の選択につながる」と批判を浴びた。「集中治療を譲る意志カード」(譲(ゆずる)カード)。人工呼吸器などが不足した時、高齢患者が若者に譲る「意志」を示すためのものだ。感染の終息が見通せない中、カードを作った大阪大招聘(しょうへい)教授の石蔵文信医師(64)に真意を聞いた。

 ――なぜ譲カードを作ったのですか。

 4月7日に7都府県に緊急事態宣言が出て、これは大変だと思いました。当時イタリアやスペインでは限られた医療資源を活用するため、「命の選択」が行われていた。回復する可能性が高い患者の治療を優先し、高齢患者への治療が打ち切られたのです。日本でも同じことが起きる可能性があると感じました。

 治療を受けたい患者の人工呼吸器が取り外されることは、あってはならない。でも人工呼吸器が足りなくなった場合、誰の人工呼吸器を外すか現場の医師に選択させるのは残酷です。若い世代へ命をつなぐため、私たち高齢世代が今のうちに人生の最終段階でどんな治療やケアを受けたいか家族や医師らと話し合ってほしいと思い、4月8日にこのカードを提案しました。

 ――医師として、命の選択を迫られた経験があるのですか。

 私はかつて、国立循環器病センターで心不全患者の治療に携わっていました。当時世界では心臓移植が行われていましたが、日本では1997年に臓器移植法が施行されるまで脳死後の臓器移植ができなかった。法の壁で若い患者が移植を心待ちにしながら亡くなるのを何人も見てきました。

 手術すれば救えるのに手術できない。それも命の選択です。悔しく、つらかった。譲カードは臓器提供の意思表示カードと一緒で、強要はしません。ただ、患者が譲カードを持っていたとしても、人工呼吸器を取り外した医師は刑事責任に問われる可能性がある。でも患者の「意志」は示せる。救える命を救うカードだと思ってほしいのです。

 ――受け入れる医療機関と機器を増やすことが先ではないですか。

 それももちろん重要ですが、その前に感染が爆発的に広がる可能性もある。その時つらい判断を迫られるのは、現場の医師です。「譲っても良い」という人だけでも意思を確認すれば、「外したくない」という人の命を守ることにもつながります。

 ――高齢者が医療を受けづらくなるような無言の圧力につながる、という指摘もあります。

手を縛ってまで延命、悩む家族

 こういう議論は大切だと思い、…

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