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 日産自動車が今月16日、新型プロトタイプを世界初公開するスポーツカー「フェアレディZ」。ファン待望のアンヴェールを前に、2014年12月配信の記者試乗記で、初代モデル(S30型)を振り返ります。新型で7代目となる、日本が世界に誇るスポーツカー。その原点に触れて探った、根強い人気の理由とは?

【2014年12月3日配信】※記事内容は当時のものです

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 レンタカーのタイムズモビリティネットワークス(広島市)が東京・有楽町の店舗で展開する「Service X」。ラインナップされる4台のうち、スーパーカー世代に最もなじみ深いのが、日産フェアレディZ(S30)ではないだろうか。海外でもいまだ根強い人気のある、初代Z。その魅力の源を、試乗で探ってみた。

一筋縄ではいかないキャラ

 初代フェアレディZのデビューは1969年。安い、丈夫、かっこいい、の三拍子そろったモデルとして、北米市場で人気が爆発した。日産の北米ブランド「ダットサン」の認知向上のみならず、日本車全体のイメージリーダーとして、70~80年代の日本車シェア拡大の嚆矢(こうし)となった。

 コミックの世界でも、初代Zはひっぱりだこ。『よろしくメカドック』のナベさん、『サーキットの狼(おおかみ)』の沖田や魅死魔国友といった名脇役の愛車として親しまれた。『湾岸ミッドナイト』で主人公・朝倉アキオ操る「悪魔のZ」が最たる例だが、ハイチューンによる凶暴性と背徳感や悲壮感がないまぜになった、どこか影のあるクルマとして描かれることが多い。

 ロングノーズ・ショートデッキの、往年のFRスポーツカー定番のプロポーション。試乗車は2人乗りモデルで、サイドは4人乗りの「2by2」よりも流麗な印象だ。フロントにはGノーズを装着。空気抵抗を切り裂いて進むかのようなシャープな造形が、獰猛(どうもう)なサメを思わせる。

拍子抜けする扱いやすさ

 試乗は、有楽町から銀座を抜けて、築地を目指すルート。

 背もたれ固定のバケットシートに腰を沈め、金具をロックするのに若干コツがいる3点式シートベルトを締める。現行モデルにも受け継がれている各眼独立したメーター、小径の「ダットサン・コンペ」ハンドルなど、コックピット周りは機能的でスパルタン。しかし、大きなフロントガラスのおかげか窮屈さは感じず、適度な開放感がある。

 パワーアシストのないステアリングは、駐車場や交差点での発進に難渋する。しっかり握り、両腕に力を込めて左右にひねる。しばらくすると手のひらが汗ばむ。一方、5速マニュアルはスムーズにシフトが入り、クラッチのタッチもソフト。極めて現代的な感覚で扱えるミッションだ。

 2リッター6気筒のシングルカム、日産伝統のL型エンジンもストレスなく回る。ツインキャブレターの整備が行き届いているようで、よく吹けて低速からトルクフル。アイドリングから1速発進→セカンドまでギクシャクすることなく、軽い車体をグイグイ引っ張る。吸排気系も含めてノーマル仕様なので派手さはないが、骨太で金属っぽいエンジンサウンドが心地よく響く。頑丈な作りを感じさせ、高出力を引き出すチューンの素材としていまだに好まれるのも理解できる。

 肌寒い冬雨で空調の効きが弱く、リアガラスの曇りが取れにくいため、不慣れなフェンダーミラーを頼りに車線変更と右左折を慌ただしく繰り返す。ただ、ヴィンテージカーの起伏に富んだボディーラインに雨粒が滴るさまは、どこかエロティックでもあり、その魅力を増してくれる。

 流麗なスタイリングとスパルタンな内装、暴力性を内に秘めた扱いやすさ――。そんな二律背反が小悪魔的でもある、思わず引き込まれてしまう「貴婦人」。フェアレディZの愛される理由を垣間見た。(北林慎也)