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 国立がん研究センターは8日、日本に加え、タイやマレーシアなどの東南アジア5カ国を中心に、アジア全体で抗がん剤の共同開発を進める「ATLAS(アトラス)プロジェクト」を始めると発表した。人口増加や高齢化などで、がん治療のニーズが増えるアジア諸国で同時に研究を進め、薬の早期開発を目指す。

 がんの治療薬開発は、これまでの肺がんや乳がんといった臓器別から、遺伝子変異ごとの薬剤開発に移行しつつある。変異は様々な種類があるため、国内だけでは臨床試験(治験)に必要な患者数を素早く集めることが難しくなっている実情がある。

 プロジェクトでは、各国のがんセンターなどとネットワークを作り、治験を実施。血液や手術で摘出したがん細胞を使って遺伝子変異を網羅的に調べ、データを蓄積。ゲノム医療を各国に展開し、子宮頸(けい)がんなどアジアに多いとされるがんの治療薬開発や、肉腫や脳腫瘍(のうしゅよう)など患者数が少ない「希少がん」の治療薬開発につなげるという。今後、開発された薬がアジア各国で同時に承認される仕組み作りも進める。

 日本国内で保険適用になったゲノム医療は、遺伝子変異が見つかっても薬が開発されていないなど、検査を受けても治療薬にたどり着くのは1~2割にとどまる。国立がん研究センター中央病院の中村健一・研究企画推進部長は「プロジェクトを通じて治験や臨床研究の数が増えれば、薬へのアクセスの改善にもつながる」と話している。(月舘彩子)